「ムラ社会と土着信仰、そして開発。」神々の深き欲望 M.Joeさんの映画レビュー(感想・評価)
ムラ社会と土着信仰、そして開発。
174分という長編。何か不思議な感覚の映画であった。沖縄で撮影されたと思うが、そこには古来より続く土俗信仰の「神」とともに生きるムラの人たちと、ムラの決まりを破った仕打ちを受ける男(三國連太郎)を取り巻くドロドロとした生身の人間のぶつかりあい。男女の欲望が渦巻いている。
神様へのお祈りを欠かさない祖父(嵐寛寿郎)、その子で鎖に繋がれている主人公(三國連太郎)、真面目で働き者の男(河原崎長一郎)、知的障害のある若い娘(沖山秀子)の4人の一家を軸に物語が展開していく。
3時間近い映画にも関わらず、その長さもあまり感じさせない。「神」と「欲望」が入り混じってさまざまな事件や出来事が繰り返し起きる。特に、東京からやってきた製糖会社の技師(北村和夫)がムラ社会のしきたりを無視して開発を迫っていくところから、開発か先祖代々の地を守るのか、別の要素が加わっていく。
信仰中心の現実から逃れられないムラの人たちを前に、感情むき出しの人間同士のぶつかりあいはどう展開していくのか。最後まで目が話せない。
底辺の人々の逃れられない現実から、開発、自然破壊、信仰、ムラ社会、貧困問題をあぶり出す物語。工業化、娯楽、快適さを求める文明・近代化が奪ってきたものは何かを感じさせる。
クラゲ島と呼ばれる南の島で、昔ながらの農耕と信仰に生きる人々。しかし、彼らも近代化の波にのまれていく。日本の家族や共同体の根源的な姿とその崩壊を、神話を思わせる物語で描き、今村昌平監督の集大成ともいえる作品。(映像文化ライブラリー「生誕100年三國連太郎特集より引用)
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