KAMIKAZE TAXIのレビュー・感想・評価
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当時、15万人の外国人労働者と9万人のヤクザがいた
そよかぜタクシーという小さな会社。ペルー人の運転手・寒竹一将は暴力団であるアニマル組のチンピラ達男を拾った。それがどっこい超ロング客。埼玉?から一旦は達男の故郷である伊豆へと向かい、そして温泉を楽しみ東京へと旅するロードムービー。
自称元特攻隊員としてテレビのコメンテーターをする政治家土門がSM趣味のため女を殺してしまい、その恋人だった達男が2億円を奪い復讐を画策するといったストーリーで、外国人差別問題など徹底した政治批判をも含んだ社会風刺を盛り込んでいる。『月はどっちに出ている』とも被ってしまうが、悪徳政治家批判が面白いためこちらに軍配が上がりそう。まぁ、『月』のほうは自伝的小説らしいからリアルだったけど・・・
前半のヤクザの内紛みたいな狂暴シーンにちょっとイライラしてしまい、勿体ない気がしたけど、逃走劇はとても良かった。以前にも観たことがあったけど、今回観たインターナショナル版では様々な客を乗せるシーンがカットされていた様子。
脱ぎっぷりのいい片岡礼子も良かったし、アイドルから脱却した高橋和也も良かった。組長のミッキー・カーチスと初対峙したときの寡黙な男を演ずる役所広司が最も良かったし、戦争やゲリラ戦をしみじみ語るところやうちに秘めたる復讐心が爆発するところが溜飲を下げてくれる。
“神風タクシー”とは元々無謀運転するタクシーの意味なので、ちょっと警戒したのですが、そんな内容ではなかった。ペルーに生息するコンドル、さらに特攻隊員についてのテーマがメインだ。喜怒哀楽はほとんど見せなかった寒竹だが「コカとコカインは違う!」と怒ったところは興味深い。コカコーラも飲めなくなるじゃん・・・
風と竹
2人の特攻隊
センデロルミノソ
バブルによって日本人は変わってしまった
1995年公開
本作冒頭でその前年が日本の政治的混乱について紹介している
何故その映像が始まるのだろうか?
本作もまたバブルをテーマにした映画であるからだろう
自民党が初めて下野した細川政権の誕生と、その金まみれの汚職による崩壊もまたバブルが産んだ産物であったと今から見れば良く分かる
バブルの徒花は日本の精神を蝕んでしまったのは間違いない
上から下まで日本人全てがバブルによって舞い上がり精神の深いところまでが汚染された
その頃に日本人は何か変質してしまったのではないのか?
そして海外で育った日本に戻ってきた日本人のほうが日本人の精神を保っていたのでは無いのか?
冒頭で差別されていると説明される日系人達の方が、日本人らしい日本人なのではないのか
これが本作のメッセージであり、テーマであったと思う
右翼的政治家、ヤクザ
極めて日本的な存在であるはずのものが、バブルを経たのち、彼等が日本人に見えなくなっている
政治家は金にまみれている
ゴルフ場で新しいヤクザの担当が韓国語を解するのか試したりするのだ
彼の屋敷も極めて日本的だ
しかし中身は嘘で塗り固められた人間だ
恐らく日本人ですらないのかもしれない
ヤクザはビジネス化しており戦前のヤクザの世界とは切り離され、会長はジャズを愛好してサックスをクラブで演奏する程だ
1995年の少し前だったか、千葉県のある巨大物流センターを視察したことある
各所に掲示してある表示板が日本語と英語でないどこかの言語で書かれていた
何語なのか質問すると、ポルトガル語だという
その物流センターではブラジルの日系人達が多数働いていたのだ
バブルの好況による極度の人手不足が、このような光景を既に生み出していたのだ
東京の居酒屋で注文を取りに来た半纏を着た若い店員が日本語を話せずエキゾチックな顔立ちで、日系人だったり外国人であることに気付かされ驚いたのもこの頃が初めてだった
いまでは当たり前の光景だ
本作では日本の美しい光景を意識して撮影している
その中で寒竹は本当の日本人らしさを示していくのだ
神風タクシーとはかってスピード違反上等のタクシーのことをそう呼んだそうだ
寒竹のタクシーの社名はそよかぜタクシーだ
そして神風特攻隊、ペルーの猛烈な季節風と絡みあわせて物語を紡ぎ出し、テーマを持たせただけでなく、それを娯楽作品として面白く成立させている
監督のその技量はものすごい力だ
ラストシーンにはカタルシスまであるのだ
朝日の逆光の中に佇む寒竹は侍の姿そのものだ
ケーナの音は尺八に似ている
異なる風土で奏でる曲調はまるで異なっていても、寒竹の吹くケーナは侍が尺八を吹くのと変わりはしないのだ
紛れもない傑作なのは間違いない
"SOYOKAZE TAXI"
原田眞人よ、このサイズに戻れ。
20年振りに見た、貪るように観た
はまる
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