学校(1993)のレビュー・感想・評価
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●山田洋次監督『学校』(1993) 神保町シアターさんにて特集上映...
●山田洋次監督『学校』(1993)
神保町シアターさんにて特集上映「一度はスクリーンで観ておきたい――忘れられない90年代映画たち」2024年6月29日(土)~8月2日(金)にて。
夜間中学の生徒たちのそれぞれのエピソードを丁寧に描く群像劇。
教師役の西田敏行さん、竹下景子さんは当時これ以上ないキャスティング。
生徒役の萩原聖人さん、中江有里さん、裕木奈江さんも好演でしたが、特に裕木さんの不良娘役は世間的なイメージとは真逆で今見直しても良かったですね。
本作の主役はイノさん役の田中邦衛さん。
『北の国から』の黒板五郎に近い生き方が不器用な50過ぎの男を演じましたがユーモアと悲哀が混じった演技で本作品を名作に昇華させましたね。
山田洋次監督らしいヒューマニティあふれる傑作でしたね。
【”憲法第26条2項。幸福とは何かを学ぶ場、それが夜間中学。”様々な事情を抱えた夜間中学の個性豊かな生徒達と、彼らに対し人間として接する温かき心を持つ教師が織り成すヒューマンドラマの逸品。】
ー 恥ずかしながら、この作品の存在を全く知らなかった。
だが、今作を観賞し、山田洋次監督が寅さんシリーズでもチラリと描いていた夜間中学への想いを結実させた作品だと思ったし、根底には山田洋次監督ならではの、人間への絶対的肯定感溢れた作品であると思った。-
◆感想
■今作では、夜間中学に通う個性豊かな生徒達と、黒井先生(西田敏行)とのが人間同士の交流が、見事に描かれている。
1.不良少女だったみどり(裕木奈江)と、黒井先生とのラーメン屋での出会い。そして、みどりは黒井先生のいる夜間中学に通い始める。
2.中国人と日本人のハーフの張(翁華栄)。金が大切、日本人は差別するから嫌いという彼に対して、田島先生(竹下景子)が涙ながらに言った言葉は、尊崇である。
3.韓国人で夫と焼き肉屋を営むキムさん(新屋英子)。生徒達からはオモニと言われ慕われている肝っ魂母さん。
言葉に説得力がある。
4.清掃作業で生活するヤンチャなカズ(萩原聖人)。黒井先生に何時も居眠りをしている事を叱られるが、自分が昼間に行っている清掃作業を先生に経験させ、自身の大変な生活を体験してもらうシーンは、可笑しいが貴重である。
5.不登校だったえり子(中江有里)。優しい性格だが、不仲な両親の姿に心を痛めるが、黒井先生が一生懸命に生徒に接する姿を見て、黒井先生に夜間中学の先生になる夢を語る。
6.軽度の知的障害があると思われるおさむ(神戸浩)。だが、同級生達は彼の事を決して苛めたりはしないのである。
■今作に登場する生徒の中で、最も厳しい生活を送って来たイノさん(田中邦衛)
幼い時に妹を事故で亡くす経験をし、肉体労働で日々を過ごす。
今作の半分以上は彼のエピソードで綴られる。
競馬が生き甲斐のイノさんは、字の読み書きを覚えるために偶々町で観た親切そうな医者(大江千里)に連れられて夜間中学に入学するのだが、恥ずかしがり屋で黒板にひらがなをカタカナで書いてという黒井先生のお願いに応えられないが、黒井先生がひらがなで“おぐりきゃっぷ”と書くと、張り切ってその横に大きな字で”オグリキャップ”と書くシーンからの、第35回有馬記念でのオグリキャップ優勝シーンを再現する熱弁シーンはこの作品の中での白眉のシーンである。
淀みなくレース展開を熱く語るイノさんを演じた田中邦衛さんの演技は本当に素晴らしい。
そして、闘病生活を山形で送っていたイノさんの死が伝えられた時に、黒井先生が英語を教える田島先生に代わり、皆でイノさんに黙祷を捧げるシーンからの、幸せとは何かを語り合い、議論し合うシーンもとても素晴らしいし、観ていて本当に考えさせられた。
<今作は、様々な事情を抱えた夜間中学に通う生徒達と、彼らに対し人間として接する温かき心を持つ教師、黒井が織り成すヒューマンドラマの逸品なのである。>
多様性を認めるという差別
やはりイノさん。
2023年でもイノさんのような愛嬌のある老人?はチラホラおり、生まれつきの持ち前の性質に悩んだり苦しみながらも、そのままの状態で生きている人。
そういう人を見ると少し滑稽で笑ってしまったり、分からず屋な所に頭が来たり、何故か手助けしたくなったりする。
だが、イノさんのような人は実は特殊な人間ではなく私を含めた大多数の人間はほとんどイノさんと変わらない。
むしろ計算高いだけで全うな人間として生きているイノさんのような存在より安い人間かも知れないと
この映画を見ると思う。
人より少し劣っていたり、優れていたりしながら生活している私たちは
至るところで自分より低い存在を探してしまう癖を持つが、そんな下らないことに人生を使うより
不得意は多くとも大好きな馬のことだけで一喜一憂、夢中になれるストレートな感性を持つことの方が尊いと思える。
多様性を認めようという言葉は日本と海外では意味合いが違うが
この映画では誰もが人より劣っている部分があったり、誰かを下に扱えるほど相手と自分に差は無いのだと思わされる。
イノさんは周りからの余計なお節介(いらない親切)には激怒していた。
相手が少数派マイノリティだということを自分は認めているので親切に接してあげる
これは相手が自分よりも下で、かわいそうだから優しく接してあげているという上から目線で庇護動物扱いをしているのと変わりない。
イノさんはそこに激怒していたのである。
多様性を認めよう、という言葉は近年耳にするが
マニュアルでひとくくりにしてジャンルとして別けるのではなく 常に『相手と自分』として人を捉えなければ大きなお節介や勘違いで終わってしまう。
イノさんと対等に接することが出きるだろうか
普遍のテーマ 人が助け合うということ
数日前にたまたまWOWOWで観たこの『学校』
とてもいい映画でしたーーーー!
久々にかなり泣いた。
1993年の映画なので西田敏行も若い。
そしてとにかくこの西田敏行の先生役が、人間味あったかくて、緩やかで、まっすぐで、すごくいい!
夜間中学の話だから、生徒たちはみんな訳ありで、昼間は仕事をし、年齢もバラバラで、境遇も様々、個性豊か。色んな事情を抱えながらここに通ってる。
そんな登場人物たちの人生を個別に丁寧に描写しつつ、縁あってここで共に学ぶという事の意味を、優しい目線で見つめる山田洋次監督。
社会の弱者と呼ばれる人たちを描かせたら天下一品ですよね。
中でも、田中邦衛演じる「いのさん」の話が涙腺崩壊。これ、間違いなく助演男優賞確実でしょう。
もはや『いのさん』本人にしか見えない。
東北生まれのいのさんが生きてきた半生が凄まじく、壮絶な生い立ちを経てここにたどり着き、読み書きを覚えて車の免許を取るんだーーと夢見てひらがなや算数を一から覚えていく姿と、不器用な人柄と、淡い恋と…
(実在の男性をモデルにしているそうです)
観終わると、今の自分がいかに恵まれているか、としみじみ思う。
そして、社会にはこんな場所が必要だとも思う。
人が人間らしく生きる権利と、存在意義。
みんな、幸せになるために生まれてきたのだから…
たくさん泣いた後はあたたかい気持ちになれる、素晴らしい映画。
田中邦衛。
公開時以来の再見。
現実はいないだろうファンタジー級に善良な役にリアリティを吹き込める田中邦衛という唯一無二の役者を今も見られる幸福。
改めて合掌。
にしても1993年、こんなに古臭い時代だったか。
彼らは今どこに
山田洋次監督は一貫して、不器用な人、恵まれない境遇の人の視点から作品を撮り続ける監督です。本作は約30年前の作品ですが、その眼差しは今でも全く変わりませんね。当時はまだバブル崩壊直後で裕福な雰囲気が社会に残っていたはずなのに、夜間中学に通う彼らにはそんな恵まれた時代の恩恵をほとんど受けられていない様にも思いました。
黒井先生に象徴される優しい人は、環境が恵まれているから人に親切になれるのですよね。それに、人は環境に恵まれるから努力ができるのですね。
今は本作が制作された時代よりも経済的にも時間的にも余裕のある人が少なくなっていると感じます。夜間中学に通っていた様な人達は今、どこで過ごしているのでしょうか。
私達は誰もが、このコロナ禍の中では本作の夜間中学に通う人々と同じに立場にあるのです
今日は2020年12月18日
コロナ禍で揉みくちゃにされた一年も暮れようとしています
12月なのに大寒波が襲来して北国の方では大雪災害のニュースです
本作のラストシーンのように雪が都会にも降って来そうに冷え込んでいます
コロナ禍で幸せを破壊された人も多くでています
様々な矛盾がこのコロナ禍によって加速され、顕在化して、一気に世の中の見える所になって吹き出して来たというべきかも知れません
本作の登場人物達のような人々が決して特殊なことはないのです
今日、幸福に生きている人だっていつ不幸せに突き落とされるかも知れないのです
明日は今日の続きであるとは保証されない時代になってしまいました
突然仕事が無くなってしまった人
営々と築き上げたことが崩れ去ってしまった人
就職先がない学生、内定を取り消された学生
大事な人が入院した人…
自分がそうでなくとも明日は我が身かも知れないのです
その不運を、コロナ禍が加速させた世の中の矛盾を恨むべきなのでしょうか?
コロナは人を差別しません
公平に、平等に感染するのみです
その中で私達はどう幸せを追求したらいいのでしょうか?
嘆く?、喚く?、恨む?、諦める?、好き勝手にやる?
誰も答えを持ち合わせてはいません
つまり私達は誰もが、このコロナ禍の中では本作の夜間中学に通う人々と同じに立場にあるのです
それぞれに、このコロナ禍の中で幸福とは何か?
どうすれば幸せなのか?
それを一人一人が学ばなければならないのです
「学びたいという気持ちがあるなら大丈夫」
そうクロちゃんは言いました
そして「授業っていうのは、クラス全員で汗をかいて、みんなで一生懸命になって作るものなんだ」とも
コロナ禍を、私達はそんな良い授業にするしかありません
その先にコロナ禍を超えて、21世紀の人間の在り方、生き方、精神の形、社会の姿
そんなものが見えてくるのかもしれません
良い授業でした
ありがとうございました
おぐりきゃっぷ!
おぐりきゃっぷ!第35回有馬記念の実況を思い出して雄弁をふるうイノさん(田中邦衛)。冬のある日、死んでしまった彼。不幸の連続だった話をクロちゃんがHRで語ると、もうしみじみ。
公開当時はまだ教育界に未練があったころだったので、ここまで教育の素晴らしさを感じさせる映画にはもう絶賛。生徒一人の死をみなで語り合って、それを生きた授業にする。そして、人生を学ぶことによって幸福を追求する・・・
今となっては中学を卒業できない事情とか、職業についても考えさせられるが、さすがに15年も経ったら学歴社会の弊害という問題は影をひそめてしまう。韓国人、中国人という生徒という設定は時代の先取り。細かな部分で山田洋次のメッセージが聞こえてくるところもいい。
夜間中学・・
山田洋次監督、西田敏行主演の夜間中学を舞台にしたヒューマンドラマで、涙無くしては見られない。人にはそれぞれドラマがある。先生も決して上から目線でない。後半の「幸福」について議論するホームルームのシーンに思わず・・(涙)。田中邦衛が演じるイノさんは、実在の人物がモデルとのこと。競馬ファン、医者の知人、病死など。1993年の松竹映画。冨田勲の音楽がいい。名作映画だと思う。
これが学校ってもんだよね。 人と人の暖かい、そしてかけがえのない交...
これが学校ってもんだよね。
人と人の暖かい、そしてかけがえのない交流。今、失われつつあるもののように感じます。
幸福とは何か?そんなことも考えさせられます。
キャスティングも素晴らしい。みんなほのぼのとした感じ、仲良くなりたいです。中江有里さんに恋しました(笑)
寅さんこと渥美清、出演場面、最高に笑えます。やっぱり存在感ありますね。
皆、必死でいきていた
現代の我々はこの時代のこの生き方を上から見ているのかもしれない。しかし、なんて生き生きしているのか。そしてなぜ思想や人情はこの今の時代のように薄くうつりかわってしまったのか。大事に受け継いだはずなのに…科学が邪魔をしたのかなあ。
何とも真実味のある芝居。邦衛さんをどう捉えるか!?でも、幸せの答えをこの映画なりに出してくれたときは涙が出た。何か間違えてきている現代に一喝!素晴らしい作品でした。
この時代のトレンドなどもおもしろい。ファーストフードを知っているだけでイケてたのかも。笑
幸福って何ですか
西田敏行さんの持ち味が生かされている。おでこ見せたおかっぱ頭の竹下景子さんが何とも可愛く清らかだ。山田洋次監督、1993年の作品。田中邦衛さん、萩原聖人さん、裕木奈江さん、中江有里さん…若かりし名優さんたちが演じる生徒一人一人のドラマが本当にありそうで切なくて胸がしめつけられた。
それから冨田勲さんの音楽♪
冒頭からエンディングまで…なんて優しい音色だろうと。気持ちがほぐれていくようなあったかい音色が物語と良くマッチしている。
夜間中学校の存在は知らなかった。
挫折や苦境を経験し様々な事情を抱えてここに通う人達と教師の交流。
「生きるってどういうこと?」
「幸福って何ですか?」
小さな教室でのホームルーム。みんなが真剣に考え悩み自分の中で答えを見つけようとしている様に 体の芯を温めてもらえるような感動に包まれた。
そして、、その日の夜に夢を見てしまった。小学校時代の仲の良かった女友達二人と耐久レースみたいな大会に参加して長い道のりを愉しみながらチャレンジしているような⁈ (笑)懐かしかった。映画に影響されたからなのかはわからないけれど寝起きに口元が緩むような(笑)良い夢だった ❀* それから又々付録だが、私にも忘れられない先生が2人いる。ひとりは小学校5.6年の担任。もう一人は中学3年の時の担任。2人とももう他界していないけれど、幾つかの教えは心に刻まれている、不思議なものであまり役立つことじゃないのだけれども(笑)先生の必死さが記憶の隅に残っいて、なんか忘れられないのかもしれない (*^^*)
シリーズ化してあと3作品続いたらしい。
楽しみに… ゆっくりと。
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