劇場公開日 1970年10月24日

「北海道へ想いを寄せる」家族 よさくさんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 北海道へ想いを寄せる

2025年11月29日
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鑑賞方法:映画館

Amazonでは何回と見た映画を映画館で初観賞。細かなあらすじは避けるが、山田洋次監督の生き生きとした活動記録が上映から55年経った今でも余韻が残る。

倍賞千恵子の自然とも言える役回りが実に絶妙だ。昭和の原節子というと大袈裟に聞こえるが、彼女の持つ日本の女性像が山田洋次監督によって見事に開花される。それは高度成長期にあって日本が得たもの、失ったものとの狭間で、自分にとっての人生は何かを誠実に訴える姿に観客が魅了されたのではないか。

笠智衆の父親役も渋いながらも、ラストシーンの持ち歌では観音様のように見える。そして極め付けは渥美清である。チョイ役ではあるが物語を隠から陽に化学変化を起こす。折しも最北の北海道に渡ろうとする家族に安らぎをもたらす手品師のようだが、実は渥美清を含めた要所要所で関わった人々により、人間は決して一人では生きていけないことを暗に示唆している。このテーマこそ家族と言う題名に相応しい。

北海道の大地は温かく見守ってくれる。晩秋の時期にこそ、お勧めの映画である。

よさくさん
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