帰らざる日々のレビュー・感想・評価
全2件を表示
練られた創作の脚本が命の感傷的青春映画
結婚を控えた青年の青春回顧を感傷的に描いた藤田敏八作品。練られた創作の脚本が命の映画。良く出来ているし、琴線に触れるセンチメンタルな内容を持っている。甘さと切なさが適度にミックスされたストーリーで完結している。ただ個人的には甘すぎた。話としては嫌いではないが、藤田演出に雑な映像処理が目立ってしまい、感動とは別に醒めてしまうところもあった。オーソドックスな青春映画としては良作。
1978年 10月12日 ギンレイホール
何やってんだ、俺
そんな思いにとらわれて暗澹たる気分に沈んでしまう
そんなことは誰にだってあるはず
物語は1978年26歳の現在から、1972年18歳の高校3年の夏を振り返りつつ、舞台も現在の東京から高校時代の長野県飯田に向かいそこで終わる
26歳はもはや青春は終わろうとしている歳だ
否応もなく大人になってしまう
18歳の頃はこんな大人になるとは思いもしなかった
18歳の頃の思い出は、大人になる自分を形作っている
振り返ってみればああすべきであった
もっと努力すべきだった
他にやるべきことがあったはずなのに、なぜやらなったんだろう
みんなみんな帰らざる日々のこと
今更とりもどせも、やり直しもできない
あの時そう過ごした結果が、26歳の自分だ
そしてそのまま大人になりきってしまい、もうどうしようもないのだ
いや、まだあがいてみればなんとかなるかもしれない
そんなことは幻想だと本人も分かっているのに、主人公の永島敏行が演じる野崎辰夫はラストシーンでレース用自転車を懸命に漕いで峠道を登っていく
江藤潤が演じた競輪選手を目指していた黒岩の代わりに
あいつはもう足掻くこともできない
俺があいつの代わりにあがいてやらないでどうする
なんとなく小説家を目指すといいつつ、自堕落な生活を続けていただけだ
なにやってんだ、俺
帰らざる日々はもう残ってはいない
夕日の最後の光のようなものだ
青春が終わる、閉じられようとしている
その焦燥感が見事に表現された傑作だ
全2件を表示