戒厳令(1973・日本)のレビュー・感想・評価
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観念的なモノクローム
別役実さん脚本で、三国連太郎主演。某動画サイトで「北一輝の視点から二・二六事件を描いた近代史劇」とあり、どんなんだろうと興味しんしんで観賞しました。最近になって、多少、二・二六事件に興味を持った自分ですが、この映画、哲学者の問答のようなものが延々と続き、肝心の?二・二六事件と北一輝の関連性のようなものは具体的に描かれておらず、全体の不協和音にドキドキしながらも、多少、置いてけぼりになりました。このあたりの時代に興味のない方などが観ると退屈でたまらないかもしれません。
北一輝といえば、有名な『日本改造法案大綱』。読んだことはないけれども、これは二・二六事件を蹶起した青年将校たちのバイブルであり、昭和維新の聖典でもあったらしい。<天皇に革命を迫る>? 左翼のような右翼革命人だったのか? 映画を観れば、もう少し何か見えてくるとは思いましたが、青年将校たちとのつながりはあまり見えず。ただ、北一輝が独自の思想をもって内なる革命を起こしたいというのが強調されていたような気がします。「革命家とはむしろ革命に耐えられる人間のこと」と息子に言い聞かすのも印象的ですが、二・二六の実行部隊とは無関係でいつも自分の身を安全なところに置いておきたい(責任逃れ)という弱い面も描かれていたり。北一輝の書物を一度、読んでみたい気にもなりました。
ラスト。「天皇陛下万歳を唱えますか」の問いに、「私は死ぬ前に冗談を言わないことにしている」という台詞が印象的。
備忘録
1921(大正10)朝日平吾により安田善次郎が刺殺(平吾は自害)
1932(昭和7)五・一五事件
1936(昭和11)二・二六事件
1936(昭和11)7月 二・二六事件の青年将校ら15人、処刑
1937(昭和12)8月 4人、処刑(北、村中、磯部、西田)北一輝54才
二・二六事件を扱った昭和のモノクロ映画で面白かったのは、『二・二六事件 脱出』(1962)です。ハラハラドキドキの救出劇です。
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