女の中にいる他人のレビュー・感想・評価
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タイトルなし
成瀬作品の中では異色の作と思うが、成瀬作品らしい演出も所々にあった。
殺人事件から一夜明けて朝を迎えると雨は上がり、テラスから聞こえるピアノの音。
既視感が…と思ったら「稲妻」だった。
葬儀のシーンで同じ空間でバトンタッチするように代わる代わる、お互いを人伝に尋ねる演出はため息が漏れた。
成瀬作品の音楽と言えば斉藤一郎だが、たまにおっと思う人が音楽を担当している。
「女が階段を上る時」の黛敏郎や、本作の林光など。
ピアノの不協和なメロディが映画のトーンにマッチしていた。
私的に川島雄三作品のイメージが強い三橋達也のキャスティングも見ておっと思った。
加藤大介はどの映画に現れてもなんでこんなに安定しているんだろう…。
登場時はタータンチェックのベストにドット柄の蝶ネクタイ姿で、
どこか可笑しみのある可愛らしさに「ああ、もうこの人は…」となってしまった笑
しかし、何といっても新珠三千代。
普段は控えめで品のある細君だが、川辺での若々しく無邪気な様子と心の読めない無表情の怖さの対比。
この頃の映画の登場人物の内面の葛藤の告白はストレート過ぎて、
胃もたれを起こしやすいけど、成瀬映画は何故かじっと見入ってしまう。
やっぱ「新珠三千代」
殺人そのものは平板だけどラスト近くの展開が秀逸、罪を告白された妻(新珠三千代)の心情の変化が怖い。
改めて思うのだが新珠三千代の演じる女性は特別なものを感じる事が多い、存在感が良い意味で「不思議ちゃん」なのだ普通なら物語の中で浮きそうだが自然と和むいつの間にか彼女の持つ世界観に魅了される。
あくまで女性を描く事が目的です
ミステリー?
犯人が中盤で殺人を自白するなんてミステリーじゃありません
成瀬巳喜男監督は一環して女性を描く監督です
本作もそうです
あくまで女性を描くことが目的です
題名からして、原作の海外小説の「細い線」をそのまま採用していません
細い線なんてことには、成瀬監督には興味がないのです
あるのは、題名どおり女の中には他人がいるということです
犯人の自白への驚愕があり、その次にでる女の言葉は私はどうなるの?
子供達はどうなるの?
女の本音はこれなのです
犯人の苦悩になどなんの興味もないのです
中の良い夫婦に見えても、妻は他人であるのです
妻だけじゃありません
登場するすべての女性が自分が最優先なのです
他人を思いやるなんてことはないのです
子供と義理の母くらいでしょう
男に対して思いやるなんてことは表面的なことだけなのです
新珠三千代はその監督の意図を汲んで見事な演技で応えています
犯人からの殺人の告白を受けたとき、自首するとの決意を聞かされた時の表情の動きは素晴らしいものでした
ラストシーンの海辺でのパラソルをさした後ろ姿
クロード・モネの「日傘をさす女」の裏返しの構図のように感じました
モネは妻と幼い息子へ無限の愛を寄せて印象派の名画を描きました
本作のラストシーンはその裏返しです
日傘をさす女も後ろ姿からみれば、彼女は一体何を心の内で考えていたものか知れたものではない
そう言うことだと思いました
成瀬巳喜男初のミステリー
犯人はすぐにわかるのだけど、その彼が妻に告白、残された杉本にも告白し、家族のことを考えたら、黙っているほうが得策だと説得される。それにしても、セックスの途中で首を絞めるという行為は過失致死にあたるのだから、それほど重い罪にはならないはず。
しかし終わってみると、一番幸せな結末だったと思わせるところが怖い。女は罪の意識よりも子供の幸せを願うものなのか・・・
基本的に家庭系・サラリーマン系の映画 → 殺人事件は、サブストーリー
1=田代は、暗くて自分本位の嫌な男 → 殺人もしている
2=なお、殺人と言っても、頼まれて首絞め → 嘱託殺人に近い、 殺意はない
3=妻は、夫に「明日、自首する」と告白され、自分の子供等の安定を考え、夫を毒殺
4=夫は直前に書類整理してるし、毒物の入手も夫なので、自殺扱いとされた
5=題名の由来は、妻が家族の事を重視し、夫を殺害したこと
6=案外面白かった
成瀬監督には、もっとミステリ・スリラーを撮って欲しかったと思う。
神保町シアターの成瀬巳喜男特集にて
上映予定の「石中先生行状記」が、おそらく東宝の管理不備と思われる不手際で急遽差し替え上映になっただか、以前に新文芸坐シネマテークのクロード・シャブロル特集で観た『一寸先は闇』(1971年フランス・イタリア)と同じエドワード・アタイヤの原作で、これも見たかったのでラッキー。
親友の妻を情事の末に絞殺した男が、親友と妻に罪を告白して許されるが、罪に苛まれて自首を決意するが、それに気づいた妻に事故に見せかけて薬殺される。
当然だが『一寸先は闇』と同じ原作なので、話も落ちも一緒の様子だか、フランスと日本の舞台背景に違いと比較して楽しめる。
成瀬監督作品としては、珍しい陰影の濃い照明やソラリゼーションみたいな画面処理なとの分かりやすいスリラー演出があり、モノローグや台詞がやけに成瀬作品の割に饒舌に感じる。
自首すると聞いた時の新珠三千代の能面の表情怖い。
鎌倉が舞台で江ノ島の花火大会がクライマックスに装置として使われるのには、正直あまり意味ない印象を受けるが、鎌倉が舞台で江ノ電が登場しないのは、逆に珍しい。
個人的にはフランス版の方が好みだか、甲乙付けがたい出来だと思う。
・事件の真相が冒頭から分かりやすくて、どう展開していくのか疑問だっ...
・事件の真相が冒頭から分かりやすくて、どう展開していくのか疑問だった
・主人公の決意が自分本位で、奥様の言うことの方が正しく思えてしまう
・そもそも自分本位だからこその行為だった。頑固で面倒な人間に見えた私が間違ってるんだよなぁ
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