「映画人の職人技が光る」女死刑囚の脱獄 papatyanさんの映画レビュー(感想・評価)
映画人の職人技が光る
父親殺しの冤罪で死刑囚になったヒロイン(高倉みゆき)が、無実を叫びながら辛くも女囚刑務所を脱獄し、列車で逃亡する。昭和35年製作・新東宝サスペンス映画「女死刑囚の脱獄」。
高所にキャメラを据えて撮った脱獄シーン、列車内で刑事の追跡をかわす逃亡シーンはスリリング。次から次へテンポ良く進み、ストーリーも判り易い。
中川信夫(監督)、石川義寛(脚本・助監督も兼任)名コンビの手腕は、前年の新東宝の名作「東海道四谷怪談」(昭和34年)で実証済み。映画人の職人技が光る。
中川監督は、新東宝時代の「東海道四谷怪談」が傑作であったため“怪談映画の巨匠”と呼ばれているが「怪談・恐怖映画は全97作品中8作品しかない」と語っている。
主演の高倉みゆきは、昭和33年「天皇・皇后と日清戦争」(並木鏡太郎監督)、昭和34年「明治大帝と乃木将軍」(小森白監督)で昭憲皇太后(明治天皇の皇后)に起用されて「皇后女優」と呼ばれた。新東宝・大蔵貢社長との愛人関係スキャンダルもあったが、品格のある演技派の女優さん。新東宝倒産後もテレビドラマ・映画に出演、結婚後に芸能界を引退している。
「法は正義のためにある、刑事の面子なんか問題じゃない」と語る宮田警部(沼田曜一)がカッコいい。
新東宝は作品的には良くても直営封切館に恵まれず、経営は次第に悪化、昭和36年5月を最後に映画製作停止、倒産した。現存するピンク映画の配給会社「新東宝映画株式会社」とは別会社。
コメントする