劇場公開日 1959年3月7日

「洋画がベラ・ルゴシなら、邦画は天知茂」女吸血鬼 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

2.5洋画がベラ・ルゴシなら、邦画は天知茂

2021年2月6日
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鑑賞方法:VOD

悲しい

単純

日本初の本格的吸血鬼映画とされる1959年の作品。

原子力科学者・松村の娘、伊都子の誕生パーティーの夜、信じられない人影が。20年前に島原で失踪した母・美和子が変わらぬ若さのまま帰って来たのだ。美和子によると、黒眼鏡の画家、竹中に囚われていたという。
竹中は天草四郎の家臣で、女の生き血をすすって生き延びている魔物。天草の娘・勝姫に恋焦がれ、その末裔である美和子を我が物にしようとしていたのだ。
隙を見て竹中の下から脱出した美和子だったが、彼女を追って竹中も東京へ。恐るべき惨事を起こす…!

天草四郎伝説と絡めたのは邦画ならではで面白いが、洋吸血鬼ホラーな感じを期待すると全くの肩透かし。
“女吸血鬼”と聞くとほんのり官能的な要素も期待してしまうが、該当者は登場せず。実際登場する吸血鬼は、“男吸血鬼”の竹中。
その吸血鬼・竹中に仕えるのが、奇怪な小人、怪老婆、ハゲの怪力男らまるでフリークショー。
言うまでもなくB級で、話も演出も演技もチープ。
作品的にもまずまず。
でも、見所二つ。

まず、一つ。
竹中が島原の山中に築いた地底城。
クライマックスはこの大掛かりのセットの中で、大立回り。

そして、最大の見所は説明するまでもない。
竹中を演じた天知茂。
本作が日本初の吸血鬼映画なら、天知茂は日本映画で初めて吸血鬼を演じた役者となる。(その後、岸田森が有名)
この世の者ではない吸血鬼。天知のクールさ、ニヒルさがそれにピタリとハマった。
美女の首筋を噛むシーンは、洋画の吸血鬼たちに負けず劣らず。
それだけではない。
竹中は月光で吸血鬼と化す。
その苦しみ、哀しみ。
そして、愛を求め、得られぬまま、死に際の醜悪な姿…。

洋画がベラ・ルゴシなら、邦画は天知茂。
天知茂の名演だけでも見る価値あり。

近大