女が階段を上る時のレビュー・感想・評価
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題名がいいですね
成瀬巳喜男の作品の中で、これが一番好きです。
あとは「山の音」ですかね。
ちなみに代表作と呼ばれる「浮雲」は今だに未見です。
30年程前に、この作品(女が・・・)を観た記憶があります。ただ、どういったストーリーだったか、まるで忘れてしまいました。十円寿司のくだりだけは憶えている(観客が、そこで少しウケる)今回の上映でも、そのくだりでクスッと笑いが起きた。こういうライブ感が記憶に刻まれますね。
音楽が黛敏朗(題名のない音楽会 初代司会者)でジャズとは意外な!?「涅槃」などの和楽器を使った前衛音楽などが有名なんですけど、クラシック・ファンの私にでさえも???な感じです。しかし今回のは、まどろむような調べのジャズで結構いいです。
この調べが、この映画のテーマを物語ってます。
今回の上映で気づいた事は成瀬監督はリアリストだな。
華やかな銀座の裏の世界もドロドロと描いている。
高峰秀子演じる圭子は銀座のバーの雇われママ。
しかし最近、彼女のお店で人気だったホステスが他の子も引き連れて独立してお店をはじめました。
そのお店は大繁盛で出資者は圭子のお店の常連であった。(←まぁよくあるお話)
圭子に次から次へと言い寄ってくるお客(下心みえみえ)その中でも工場経営者(加藤大介)は真摯に接してくれる。彼女が倒れて佃島の実家に療養している時、彼はわざわざ果物を届けにお見舞いに来てくれた。
その後、彼からプレゼントを受け取った際に
「結婚してくれないか?」
旦那に先立たれ生活のために銀座のママをしていたが、ようやく圭子にも幸せが訪れようとしていた・・・
はい、その続きはUーNEXTでも観てください(本当は映画館で観てほしんですけどね)
役者陣が豪華ですね。
仲代達矢が脇役て凄い!
個人的に好きな十朱久雄さん(名バイプレイヤー)は今回も出ておられました。観ている間どこに出ておられるのか分からなかったですが。
今回フィルム上映で観れて良かったです。全然劣化していないのには驚きました。
こんな男たちに耐える。圭子の日常
『耐え子の日常』という漫画がある。OL辛抱耐え子が同僚の朝美ちゃんらトンデモナイ人たちのせいで理不尽な目に遭う。このヒロイン矢代圭子も男たちによって理不尽な目に遭っていく。なかでも、加藤大介扮する関根が凄い。モテない男ながら、ちゃっかり圭子をものにして結婚にまでこぎつける。だが、実際は…。多分、関根、自分のやっていることを悪いと思っていないだろう。自分のウソも自分で信じちゃうし。まさにサイコパス。しまいには、隣の車をかってに乗って、どこかへ行ってしまう。『めし』での姪の里子のように、成瀬の作品には、なぜかトンデモナイ人がヒロインに絡んでくる。だから、悲劇でも何故か笑えてしまう。それが成瀬作品を観る楽しみのひとつでもある。多分、僕だけだろうが。
元締めが儲かる仕組み
全編を貫くクールな音楽(黛敏郎)は夜の銀座を表しながらそこで働く女達を冷たく突き放しているようで背中がひんやりしてむごいと思った。それと対照的だったのが主人公演じる高峰秀子のナレーション、温かみのある声ですぐ彼女とわかる。そのナレーションがなくなったのはどの箇所からだったろう?思い出せない。
バーのママは合わないと客からも客の妻からも言われる清子(高峰秀子)。でも最後は心機一転なのか明るい顔で勤め先のバーのある二階へ向かって階段を上って行く。
いろんな理由で水商売に入る女達。奮闘していい客つかまえ、世話になったママの客も頂いて自分の店を持つことを夢見る女達。体をはって商売に励んでも、清廉潔白や品の良さが尊ばれる世界ではない。結局借金まみれになって責められ苦しみ逃げる先が死の場合もある。儲けているのは元締めだけ、遊んでいい思いをして何一つ傷を被らず貸したお金を回収するのは客。
女は身と心を削って男の客を喜ばせ、女と客は騙し合いの疑似恋愛ごっこ、結局損をして傷つくのは女ってなんなんだと思う。男が「仕事」と「経済」を専有しているからだ。女は結婚して妻になるのが一番という考えが信仰されているからだ。
高峰秀子の着物セレクトが圭子ママの個性をよく表していてとても素敵だった。東京の女に合うのは縞柄だ。30歳で地味なあの柄の着物。今の銀座だったら(知らないけれど)有り得ないだろう。それがバーという水商売への批判になっていたと思う。
夜の社交場をクールにみせる。音響効果が素晴らしい。
故相米慎二が日本映画のオールタイムベスト3のうち一本として挙げた作品である。成瀬巳喜男の作品であれば「浮雲」か「めし」あたりを挙げるかと思いきや「浮雲」と同じく高峰秀子と森雅之が主役を演じた本作を持ってきた。稀代の見巧者だった相米慎二の鑑賞眼の確かさには呻らざるを得ない。
勘定貸しによる高価な遊興費設定、資本と経営の分離、ママを頂点にした店内ヒエラルキーの設定、いずれも見事なまでに洗練された銀座のシステムを背景にして男女の騙し合いの姿をクールに描いた傑作である。脚本、演出、撮影すべてが秀逸であり、もちろん高峰秀子の演技、身のこなしの素晴らしさは言うまでもない。ただ私としてはこの映画の音響技術を特筆すべき要素として挙げておきたい。音楽は黛敏郎であり明らかにこの2年前に製作されたフランス映画「死刑台のエレベーター」の影響をみて取ることができる。ただこの作品で採用されているパースペクタ・ステレオシステムでは現在のフルステレオとは異なり同時に複数の音をステレオ音声にすることはできなかった。だからセリフは簡潔に、効果音は少なめに、そして劇伴はエモーショナルに、それぞれを組み合わせて各シーンの優先すべき音が選ばれて鮮やかに構成されている。このこと一つだけでも劇場で観る価値のある作品である。
タイトルを見ただけで広がる世界
巷に僅かに溢れたはした金。
どこがいいんだ?
階段を登る、それはステージを変える行為
傑作です
重い観応えが有りました
劇中で夕暮れ時の銀座が写ります
本作から60年経っていますが今と変わらない、仕事帰りのビジネスガールと着物姿のプロがすれ違う光景です
夜のお店は疑似恋愛を楽しむお店です
もっともそれを楽しめるのは重役以上で、若手社員は接待のお付きに過ぎません
こうしたお店で接待の交際費で場数を踏んで、男を磨く事が出来た男が重役になれる
そうしたものの筈でした
でも本作を観ると60年前からお偉いさんも、こんなていたらくだった訳です
男はいつの世も駄目です
男も女も両方がこれは疑似恋愛でゲームなんだとわかった上でゲームを楽しむ
節度をお互いに守ることでゲームは成立しているのです
言い方を変えれば、建て前を守りとおせる男であるのか、女であるのか試されているとも言えます
そのゲームのルールをわかった上で、女性に気遣いと真心を示すことができるか
女性はそれを知った上で男のプライドを理解できるのか
それが夜の街での修行なのだと思います
それが出来ない男はやはり仕事でも脱落していくものなのだとやはり思います
女も然りです
シングルマザーがホステスにいることを示すシーンがあります
今と何も変わりはしません
子供を抱えて昼の仕事ではお金がかかる年頃の子供を養えない現実はあるのです
雇われママの圭子もつらい思いを重ねて修行しています
最高につらい仕事です
だから高給なのだと思います
階段を登る、それはステージを変える行為
女が別の女に変わるところ
ラストシーンは主人公の圭子がまたひとつ階段を登ったのだということだと理解しました
彼女はきっと銀座で成功していくのでしょう
高峰秀子36歳、役の圭子は30歳の設定です
まだまだ十分に若く美しいのですが、役の年齢よりも実年齢が上のところがまた、女性の曲がり角である年齢を迎えているという説得力を増していると思います
黛敏郎による音楽が秀逸です
まるでフランス映画のような趣があり本作の雰囲気を高めています
深みのある素晴らしいタイトル
夜の銀座を取り巻く女のしたたかさと男のどうしようもなさを、マダムの乾いたナレーションとスタイリッシュな映画でドロドロとせずしみじみと味わえた。加東大介演じる見た目パッとしない優男ながらにして女たらしという難しい役どころ。家庭持ちの銀行マンと見送りのホームで対峙するシーンの緊張感たるや。
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