劇場公開日 1960年1月15日

「元締めが儲かる仕組み」女が階段を上る時 talismanさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0元締めが儲かる仕組み

2025年3月26日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

難しい

全編を貫くクールな音楽(黛敏郎)は夜の銀座を表しながらそこで働く女達を冷たく突き放しているようで背中がひんやりしてむごいと思った。それと対照的だったのが主人公演じる高峰秀子のナレーション、温かみのある声ですぐ彼女とわかる。そのナレーションがなくなったのはどの箇所からだったろう?思い出せない。

バーのママは合わないと客からも客の妻からも言われる清子(高峰秀子)。でも最後は心機一転なのか明るい顔で勤め先のバーのある二階へ向かって階段を上って行く。

いろんな理由で水商売に入る女達。奮闘していい客つかまえ、世話になったママの客も頂いて自分の店を持つことを夢見る女達。体をはって商売に励んでも、清廉潔白や品の良さが尊ばれる世界ではない。結局借金まみれになって責められ苦しみ逃げる先が死の場合もある。儲けているのは元締めだけ、遊んでいい思いをして何一つ傷を被らず貸したお金を回収するのは客。

女は身と心を削って男の客を喜ばせ、女と客は騙し合いの疑似恋愛ごっこ、結局損をして傷つくのは女ってなんなんだと思う。男が「仕事」と「経済」を専有しているからだ。女は結婚して妻になるのが一番という考えが信仰されているからだ。

高峰秀子の着物セレクトが圭子ママの個性をよく表していてとても素敵だった。東京の女に合うのは縞柄だ。30歳で地味なあの柄の着物。今の銀座だったら(知らないけれど)有り得ないだろう。それがバーという水商売への批判になっていたと思う。

talisman
あんちゃんさんのコメント
2025年3月27日

talismanさん、いつもシブい作品のレビューまで目を通して共感いただきありがとうございます。確かにこの作品の素晴らしいところは衣装も担当した高峰秀子さんの着物です。ほとんどが渋い柄の紬の訪問着だと思いますがよく分かりません。今年の1月に歌舞伎座で「高峰秀子の愛した着物展」があったそうで行けば良かったのですが。

あんちゃん
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