お引越しのレビュー・感想・評価
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坂道の夕立は相米らしいけど夕食の買物がどうなったのか気になる
相米慎二監督1993年公開作品の4Kリマスター、当時キネ旬の2位で栗田豊通撮影監督の映像が美しくデジタル修復版を作るにふさわしい映画なのだけれど我々「相米世代」にはまっとうなカット割りとカメラワークが綺麗すぎておよそ「相米らしからぬ」映画であった。京都を舞台に可愛らしい関西弁がじゃりン子チエを想起させる世界一不幸な小学6年生レンコがとても良くて「子ども映画の巨匠」相米の面目躍如に「こちらあみ子」の森井勇佑監督も多大なる影響を受けたと述べている。そしてなんといっても桜田淳子の母役が素晴らしくこれが芸能活動の最後となったことが残念。対して調子のいいアル中ダメ親父を演じる中井貴一がミスキャストなのと後半のレンコの琵琶湖畔山中での彷徨シーンがあまりに長すぎてもったいない。エンドロールは相米の相米映画に対するセルフオマージュでやっとそれと分かる爪痕を残した。
あの頃といえば。
桜田淳子
思い出は片手で数えられるだけで十分
相米慎二監督の映画は2作目です。1本目は昔に見たセーラー服と機関銃なのですっかりご無沙汰です。もう30年前近い映画なんですね。4kリマスターということでしたが、画像は少しボケた感じでした。
ストーリーは離婚をする両親を止めようと奮闘するレンのお話。前半は子どもらしい親への反抗で進み、一転後半はファンタジーの世界で見る側の判断に委ねられる感じでした。
琵琶湖のお祭りは随所で火が燃え盛り幻想的で映画には欠かせないシーンになっています。特に最後の湖で船が燃えて両親が消えるシーン。花柄ワンピースのレンを抱く今の自分。そして「おめでとうございます」と叫ぶレン。両親と楽しく過ごした子供の自分とお別れし、成長した自分へのメッセージだと受け止めました。
桜田淳子さん、あらためて見ると素晴らしい女優さんですね。中井貴一さんが負けてました。
一番印象に残ったのは琵琶湖で出会ったおじいさんのセリフ「思い出は片手で数えられるだけで十分」。これを聞いて私もはっとしました。たくさんの思い出に縛られていても何もいいことはないし、忘れて前に進むことも時には大事だと私もレンコと一緒に学びました。
レンコを観る作品
ホームコメディから異世界へ:濃密な映画体験
1993年公開のこの映画を今さらながら観て、未見だったことを強く後悔しました。ホームコメディを思わせるタイトルとポスターに油断していましたが、実際に体験したのは、それを大きく超える濃密な時間でした。
映画が始まり、若い桜田淳子と中井貴一、そしてデビュー作の田畑智子がスクリーンに登場した瞬間、何か異世界に連れて行かれたような感覚を覚えました。
物語は、心がすれ違い始めた夫婦と、その間で翻弄される小学6年生の娘の話です。桜田淳子演じる母と、中井貴一演じる父は、おそらく雇用機会均等法の直前に就職した世代でしょう。制度的には平等が進みつつも、女性が復職して活躍するには困難が多く、男性も深夜残業が当たり前で、家庭を顧みる余裕はほとんどない時代です。
現代の若い世代には、この夫婦のすれ違いがピンとこないかもしれませんが、当時の社会的な背景を考えると、この葛藤は非常にリアルに感じられます。特に共働き夫婦にとって、仕事と家庭のバランスを取ることなど到底叶わない時代だったのです。
すれ違う夫婦の仲を取り持とうと健気に行動するナズナ役の田畑智子。その抑えた演技は、相米慎二監督の指導もあるのでしょうが、素晴らしいの一言に尽きます。子どもらしい無邪気さを保ちながらも、親の不和に心を痛め、時に大人びた表情を見せるナズナの姿が印象的でした。
映画が進むにつれ、物語はホームドラマの枠を超え、不思議で幻想的な領域へと踏み込みます。ここが圧巻です。相米慎二監督ならではの長回しと独特なカメラワークが、現実と非現実の境界を曖昧にし、観る者を濃密な空間に引き込みます。
平成の時代ではあるものの、映画が持つ空気感はどこか昭和を思わせます。ケータイもパソコンもない時代の時間の流れを感じさせ、その豊かさを懐かしむ気持ちが湧き上がりました。もちろん、それは錯覚なのかもしれません。しかし、この錯覚を抱かせるほど、映画の描写はリアルであり、ノスタルジックなのです。
ラストに向かうにつれ、夫婦、そして娘それぞれが自分の道を模索し、変化していく姿が描かれます。家族の物語でありながら、その先にある人生の普遍的なテーマに触れる深い映画でした。これからも多くの人に観てほしい作品です。
少女の成長物語
桜田淳子VS田畑智子
相米慎二特集4Kリマスター版「お引越し」初鑑賞
主演桜田淳子(昭和生まれには色んな意味で感慨深い…)に惹かれ鑑賞したが、実質主演はこの作品がデビュー作、小学生(声変わりもしていない!?)の田畑智子である!
相米作品ならではの、男はあくまで添え物(中井貴一)、ひたすら女の業を描き、これが実質引退作の桜田淳子と娘役の田畑智子の物語に
前半こそタイトルの「お引越し」にまつわる家族3人のあ~だこ~だをコメディタッチに描いているが、後半は田畑智子の独壇場(それもファンタジー風味)
さぞかし、相米慎二にしごかれただろう…
田畑智子の同級生役で遠野なぎこも出ており、色んな意味で業の深い女性の映画となっております
オワリ
田畑智子の天才子役ぶりに目を見張る
去年からたまに劇場で観ることにし始めた旧作。今回は1993年公開の相米慎二監督の「お引越し」。32年前の作品だけあって、中井貴一は若くてギラギラしているし、田畑智子に至っては子供でした。桜田淳子については懐かしいとしか。
内容にはあまり関係ないのですが、第一印象は2つありました。
一つ目は、京都を舞台にしたお話だったものの、全然京都を強調していないところが驚き。最近だと外国受けも考慮してか、京都を舞台にする場合ことさらにその美しさを強調していて、何となくそのキラキラ感が馴染めない気がしないでもないところ、本作にはそういう意識が全くなく、裏を返せばまだまだ日本に余裕があった時代だったんではないかと、変なところで感心しました。
二つ目は、田畑智子の天才子役ぶり。両親が離婚を前提に別居をはじめ、内心が揺れ動き行動も過激化していく小学生の役柄を、見事に引き受けていました。併せて、彼女が全速力で走りまくったり、険しい道なき山道を登ったりと、ガタイが良ければトム・クルーズばりの動きをしており、こちらも感心しました。
お話の内容としては、駄目な夫ケンイチと有能な妻ナズナの夫婦の別れ話と、それに翻弄される娘レンコの掛け合いが絶妙であるとともに、レンコの心情描写が画面から湧き上がってくるようで良かったです。それもこれも、この3人家族を演じた俳優の技量の高さに依るところが大きいと思われ、繰り返しになりますが田畑智子の天才ぶりは目を見張るものがありました。
また物語終盤、琵琶湖とも黄泉の国とも解釈出来る不思議な場所で、過去の自分との対面と別離を果たして成長していくレンコの姿を観て、今後の彼女のさらなる成長に思いをいたして劇場を後に出来たところも非常に映画らしい映画と感じました。
そんな訳で、本作の評価は★4.2とします。
当時、小6、12歳だった田畑智子の演技とキャラクターに惹きつけられるが、火祭り以降、ファンタジーになってしまうのが残念
桜田淳子さん目当て
相米慎二監督に西洋が追いつくべき時が来ている、
そうである。
リアルタイムで公開時殆どの作品を映画館で観ている者としては
(とは言っても評価しているのは『ラブホテル』だけであるが)
ほぇ〜?ど、どこが?体育会系の創り方??
としか思えないし、正直どうでもよくて
(ファンの皆さん、スミマセンね。相米さん、僕は昔から嫌いなんです。)
では、どうして今回観たかというと、
桜田淳子さんが観たかった、
ということです。
綺麗で可愛くて、でもメンド臭い女を演じさせたら
日本一の桜田淳子さんである。
桜田淳子さんは、こういう役はやはり巧い。
桜田さんの映画なので5回くらい観ているが、
(きっと相米さんにハラスメントレベルでこき使われた)
田畑智子さんが素晴らしく、長年彼女の映画も観ているが
本作は代表作であり彼女の最高傑作であることが今回分かった。
いいのか悪いのかは、わからないが。
4Kリマスターの割にはボヤケた感じで、相米さんの映画って、なんか微妙に(ソフトフォーカスではない)ピントが少しボケているようなルックで、そういう画面や雰囲気が相米さん欲しいんだと思っていて、
でも、リマスターしても少しボケているって、
なに?
少しまとまりが悪いかな?
京都と大津を舞台として、梅雨時期から祇園祭を超えて大文字や船幸祭のあるお盆の時期まで、数カ月間、家族の姿を追う。
前半は、別居した父と母の仲をなんとかとりもとうとするレンコの格闘を描いている。くるくる動きよくしゃべるレンコを田畑智子が好演していて楽しい。ただ、この映画の場合、別居して出ていくのは父親であって、レンコは母親と一緒に家に残っている。引っ越ししたわけではない。原作は確か、子と母のほうが引っ越ししていたかな?
だから「お引越し」というタイトルは物理的に家を代わるということではなく、前の自分を脱皮する、この場合は子どもの話なので成長するという意味が込められているようだ。
相米慎二の好きなテーマであって「セーラー服と機関銃」も「雪の断章」も結局は少女の成長譚であったのと同様である。
後半に入っての船幸祭のくだりは、まさしくレンコの身体や心の成長、変化を表現しているのだろう。炎や月は身体的成長(初潮も含まれる。ひょっとして初潮はそれ以前、風呂場に立てこもった時点で訪れたのかもしれないが)、湖で父母の神輿が沈んでいくところは精神的な自立を表している。
相米慎二という人は極めて含羞の強い人で例えば森田芳光のようなあからさまなイメージ化、シンボル化は好まない。この監督のとても良いところなのだが、いかんせんこの映画は後半部分の尺がやや長すぎて全体のバランスが悪い。そこがちょっと残念。
ぎゅっと抱きしめたくなる
途中は戸惑った
田畑智子力!
相米慎二作品はいつも『少年・少女時代の終わり』を描いている印象だが、本作もまさに、両親の離婚の危機から始まる『少女時代の終わり』の話。
小学校で巻き起こされるエピソードのひとつひとつが良いのだけど、理科室放火事件から籠城作戦の流れが特に最高!みのる、良い…
そして終盤の「異界としての滋賀」で繰り広げられるまるでイニシエーションのような「冥界巡り」はいったい何なんだろう?と思ってたら、けっこうはっきりとれんの少女時代を抱きしめ、「おめでとうございます」からのエンドロールでの『成長』と、描き切ってるな…
とはいえこうごちゃごちゃ書くまでもなく、本作は田畑智子!その鮮烈さ、生命力を伝えるために本作があると言っても過言ではない。その力を見出したことが相米慎二の力なのだと、言って良いのではないか。
ようやく見れた…。
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