劇場公開日 1959年5月12日

「無駄があるから世の中いいんじゃないかな」お早よう talismanさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0無駄があるから世の中いいんじゃないかな

2022年1月4日
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鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

幸せ

上の言葉はハンサム&インテリ青年役の佐田啓二の台詞です。子どもが要するに以下のことを言って何にも喋らないというストライキに入るからです。子ども曰く、こんにちは、こんにちは、いいお天気ですね、そうですね、どちらへ、ええちょっとそこまでと無駄なことばかり大人は言っている。自分(子ども)は喋り過ぎと言われるがテレビが欲しい、毎日同じものしか出てこない夕飯は嫌だと言ってるだけだ、それで黙れ!と言われたから黙ってるんだ。に対して、斜めの関係ー子どもに英語を教えてくれる青年ーの佐田啓二さんが言います。その通りだね、でも無駄があるからいいんじゃない?挨拶に情報量はないけれどそれが潤滑油になるんだよ。

一方でさわやか青年(佐田)の姉役の沢村貞子からは「でもあんたは大事なこと言えないじゃない」と言われます。子どもの叔母である久我美子のこと彼は好きなのに一言も言えてないから。駅のホームで二人(佐田と久我)がばったり会って口にするのは無駄なこと。いいお天気ですね、そうですね、いいお天気、二三日続くでしょうね、そうですね・・・。それがラストシーン。笑えてほんわかとなりました。

内容は可愛い子どもたちと無駄話や噂話をするわりに大事な話ができない大人たちの対比を楽しむ映画です。子どもの世界に大人が降りていって先回りしたりご機嫌とりしないのも良かった。子どもは子ども、大人の話に入るんじゃありません!(子どもの頃、親に何度言われたことか!)キャストがあまりに豪華で目が眩みます。椿山荘、黒門町、西銀座・・・東京を感じました。

映像はザ・小津です。格子柄はこれでもかーと言うほどの氾濫状態にも関わらず全くうるさくない。映画では緑色のホーローのやかんが大きな役割を担いますが差し色の王様はやはり赤❗️子どものセーター、座布団、靴下、スリッパ、はたき、カレンダー、毛布、革ジャン、味の素や醤油差しの蓋、七味入れ、ヱスビーのカレー粉の缶、フラフープ、消火器、ホーローの鍋とやかん、湯飲み、とっくり、じょうろ、洗濯ロープに掛かってるタオルやセーター、スキー板、そして待望のテレビが入っている段ボールには赤いN(今だったらパナソニックのP?)。王様だけれど身の程をわきまえている赤。互いに補完する関係なので台所もお家の中も物が少なく質素でとても綺麗!

小津監督は話の内容より映像に命をかけた人なのかなあと思う程です。画面の切り取り方が凄い。最初は無機質な鉄塔から始まる。長屋的文化住宅の屋根に囲まれて画面の真ん中上に土手が映る。そこを子どもたちが行っては消え戻ってまた映る。でも構図は絶対に変えない。構図とかカメラのポジションとか差し色や格子柄の偏執狂みたいだ。でも楽しかった。子どもが何よりかわいかった。小津安二郎?娘を嫁にやる話ばかりの人ね、とこれからは言わないことにします!

おまけ
佐田啓二にクラクラしました。寒い冬の中、子どもを探しに外に出る彼。寒いから暖かくして、と言われ何を着るんだろう?もうセーターは着てる。ベージュのセーターを手にした!セーターの重ね着?いえいえ、そのセーターは両肩に掛けただけ、そして暖かそうなコートにマフラー!お洒落過ぎて卒倒しそうでした。1959年(昭和34年)にこんなに素敵に洋服を着こなす人、指示する監督が居たことに驚嘆します。そのセンスは一体どこから来たんだろう?

talisman
マサシさんのコメント
2023年12月29日

こんばんは。真夜中にSNSやらないように気をつけているんですが。ついつい。すみませんでした。
閑話休題
小津安二郎監督、溝口健二監督、黒澤明監督をワンマンと暴言した事も謝罪して訂正します。言い方は難しいですね。また、僕のレビューも直感で書いています。嘘は書か様にしていますが、少し辛辣になる事がある事もご理解頂ければ幸いです。よろしければ今後ともよろいくお願いします。
とにかく、小津安二郎、黒澤明、溝口健二監督は偉大だとずっと思っています。勿論、彼らの作品でも、嫌いな作品、僕に合わない作品あります。しかし、それは正直にレビューします。但し、言い方は気をつけます。

マサシ
マサシさんのコメント
2023年12月29日

おはようございます。
夜分遅く申し訳ございませんでした。今後、気をつけます。
申し訳ございませんでした。

マサシ
Gustavさんのコメント
2023年12月20日

talismanさんへ
男女の機微と大人対子供の違いを丁寧に説明されたレビューに思わず頷き、佐田啓二のセーターをマフラー代わりに掛けコートを羽織るところに私も驚きました。このセンスを演じる佐田啓二の容姿や佇まいは、当時の俳優の中では突出した存在でしたね。決して演技派ではなく、銀幕のスター然とした魅力がありました。この作品ではトップに名前がくる主演扱いですが、控えめで落ち着いた雰囲気がまた作品の品の良さになっています。本当にいい男優さんでした。
私の家も近所で最初にテレビを所有しなかったので隣の家にテレビを観に行った記憶があります。4歳か5歳の頃で、父が負けじと無理をして直ぐに購入したようです。すぐ上の姉や兄たちが強請ったのだと思います。田舎でしたから都会より大分遅れての話です。それでも『ブーフーウー』や初回の『ひょっこりひょうたん島』を観た記憶はあります。東京オリンピックの年ですね。それからはテレビばかり観て“一億総白痴化”の一人になってしまいました。

Gustav
everglazeさんのコメント
2022年1月4日

talismanさん
明けましておめでとうございます。今年も色々教えて下さい。

レビューを拝読して、あれ、カラーだったけ?と思いました。ハンサムな佐田、圧倒的存在感の杉村、同感です!

everglaze