「拝啓渥美清様」男はつらいよ 拝啓 車寅次郎様 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
拝啓渥美清様
シリーズ47作目。
晴れて就職した満男。靴の販売や卸をする小さな会社。働き始めてまだ半年だが、不得意な営業や残業にうんざり。
柴又に帰って来た寅さん。満男に鉛筆売りの実演をレクチャーしてみせる。鉛筆の良さや亡き母との思い出話を絡め、堅気の商売ではないが、物売りの大先輩に皆感心。寅さん、お見事!
満男の下に、滋賀県・琵琶湖の近くの長浜に住む大学の先輩からハガキが。町で行われる祭りの誘いと、何やら相談があるとか。
休暇を取って、長浜へ。
一方の寅さんも琵琶湖の辺りを旅していた。
そこで、撮影旅行をする女性・典子と知り合う。
典子が転んで怪我をしてしまい、同じ宿に泊まる事に。
聞けば、人妻。夫婦関係は冷え切っている。この撮影旅行は年に一回のお楽しみ。
そんな典子に同情する寅さん。
翌日琵琶湖を回る約束をするが、夫が迎えに来て…。
かたせ梨乃がしっとりと大人の女性を演じる。
長浜にやって来た満男は、大きな旧家である先輩の家に泊まる。
そこで出会ったのが、先輩の妹・菜穂。
昼寝をしていた菜穂の顔に見とれ、起きた菜穂は激怒。
牧瀬理穂が強気な美少女を演じ、これまた魅力的で可愛らしい。
出会いは最悪だが、打ち解ければ意気投合。すっかり仲良くなる。
祭り見物中、「付き合ってる人とか居るの?」と聞く満男。はぐらかすように答える菜穂。
そこに突然話し掛けてきたのが、偶然再会した寅さん。
「居たっていいじゃないか。そいつと勝負するんだよ」
そう言い残し、満男は後を追い掛けるも、寅さんは人ゴミの中に消える…。
先輩からの“相談”とは、余りにも唐突な菜穂との縁談の話。
動揺する満男。
が、満男も菜穂もお互い気になり始め、名残惜しく満男は柴又に帰る…。
ところが、この縁談話は先輩が勝手に決めたもの。それを知って、またまた菜穂は大激怒…。
後日、満男は柴又にやって来た先輩からその話を聞かされ…。
寅さん不在のくるまやを訪れた典子。
帰って来た寅さんは、満男の運転で典子に会いに行くが…、
家の前で、子供と幸せそうな姿の典子を見て…。
もはや定番となった寅さんと満男の2段セット恋物語。
今回はどちらも淡く、儚く終わる。
またまた失恋同士となった二人。
「恋にくたびれた」と言う甥っ子を、おじさんは一喝する。
「燃えるような恋をしろ。大声出して、のたうち回るような、恥ずかしくて死んじゃいたいような恋をするんだよ」
物売りのレクチャーもいいが、やっぱり寅さんは恋の大先輩。江ノ電駅での二人の別れは本作の名シーン。
祭りの雰囲気や琵琶湖の風景も美しく、話も切なさの中に幸せや喜びを感じ、最終作を前に弾みを付けた。
本作出演前にドクター・ストップを受けた渥美清。
確かに肌につやが無く、声も枯れ始め…。
いつ尽きてもおかしくない余命で、次作でいよいよ“最後の寅さん”に臨む…。