「人生の筋道を立てるために…。」男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日 syu32さんの映画レビュー(感想・評価)
人生の筋道を立てるために…。
「男はつらいよ」シリーズ第40作。
Huluで「HDリマスター版」を鑑賞。
原作(俵万智「サラダ記念日」)は未読です。
またまた夢のシーン無し…。
もしかしたらもう無いのかしら…?
信州小諸で女医・真知子(「柴又より愛をこめて」のマドンナと名前被り(笑))と出会って一目惚れ。姪の由紀ちゃんとも仲良くなって、進路で悩んでいる満男も由紀ちゃんと同じ早稲田大学に入りゃあいいんじゃないかと考えて、寅さん下見に行く(笑) 由紀ちゃんを探して親切な学生・茂くんに案内してもらった講義室で、いつも通りの寅さん節でもって特別講義(「寅次郎頑張れ!」のワットくんが起こした騒動について)(笑) 大爆笑をかっさらうんだからなぁ…。純粋な少年のような一面を持っている寅さんだからこそ成し得る技なのかもしれない。
真知子と出会うきっかけとなった老婆が危篤という知らせを受けて、茂くんの運転する車で由紀ちゃんと共に駆け付けるも間に合わず…。真知子は、入院するのを嫌がって想い出が染み付いた自分の家で死にたいと言っていた老婆を無理矢理入院させたことを悔いていました。誰かの人生の終幕に、医師であるとは言え、他人である自分たちが介入して良いものだろうか…? そんな真知子にそっと寄り添う寅さん。真知子の方も寅さんに死に別れた夫の面影を見ており…。ということでいつもの癖が発動して、自分から身を引くことにしたのでした…。
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寅さんも歳を重ねて来たせいか、人生にまつわる名言・金言を言うようになって来ました。自身の人生経験から出る言葉だけに、真っ直ぐ心に刺さって来るから心地好い…。
満男が成長し、思春期真っ只中です。進路について絶賛お悩み中なのでございます。そんな彼の疑問に、前作に引き続いて真摯に答えようとする寅さんなのでした…。
「何で勉強なんかしなきゃいけないのかなぁ…?」
「人間、生きてりゃいろんなことにぶつかるだろ? そんなとき、俺みたいな勉強してないヤツは振ったサイコロの目で決めるとか、そのときの気分で決めるしかない。でも、勉強したヤツは自分の頭できちんと筋道を立てて、はて、こういうときはどうしたらいいかなと、考えることができるんだ」
…勉強したことなんて役に立たない、なんて言う人が多いけれど、生きていくために必要な考える力を養うための訓練なんですよねぇ…。長年の経験から、寅さんはそれをよく分かっているからこその、上記の言葉なんですなぁ…。
【余談】
とらやからくるまやに店名変更。
思い返せば、変わったのはそれだけじゃなくて…。
年代も現在に近付いて来て、風景も馴染みのあるものが増えて来ました。都会の風景なんか特にそう…。
長寿シリーズならではですよねぇ…。時代の変化を切り取る…。「男はつらいよ」シリーズの歩みは、そのまま戦後日本の歩んで来た道のりと同じなんだなと思いました。
それでも寅さんは変わらない。それはもしかすると、誰もが求める理想的な生き方を体現しているからなのかも…?
【余談2】
御前様は、自宅にて座っているシーンのみの出演となりました。笠智衆の体調が思わしくなく、撮影場所も笠自身の自宅なのだとか…。これも長寿シリーズならではと言える出来事。御前様を見られるのも、あと少し…。