「寅ちゃんの嫁っこになる」男はつらいよ 奮闘篇 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
寅ちゃんの嫁っこになる
シリーズ7作目。
今回のマドンナ・榊原るみは、特撮ファンなら誰もが知っている、『帰ってきたウルトラマン』の郷の恋人役である。
まず、序盤のエピソード。
寅さんの実母役でミヤコ蝶々が第2作目以来の登場。
寅から「近々嫁を貰う」との便りを貰い、自身も久々に柴又へやって来た。
さくらを寅の嫁と勘違い。考えてみれば、寅とさくらは異母兄妹。さくらと寅の実母はこれが初対面。改めて、複雑な家族関係である。
実はその便りは1年前のもの。
1年前は誰にのぼせてたんだっけ?…と、これまでのマドンナを思い出すとらや一同が面白い。
また、第1作目のマドンナ・光本幸子(御前様の娘)も顔出し出演する。
ほどなく寅も帰って来て、渋々ホテルに泊まっている実母に会いに行く。
相変わらずバカ丸出しの我が子にガッカリする母。
まともに生きてりゃ今頃、お嫁さんを貰って孫の顔でも見れたのに…。
やはりと言うか、親子喧嘩。
テメェがあっと驚くようないい嫁さん貰ってやる!…と啖呵を切って、ぷいと旅へ。
今回はこの“お嫁さん”が騒動になる。
旅先で、寅は一人の若い女性と出会う。
ちと様子がおかしい。
気になって事情を聞いてみると…
名は、花子。発育遅れ。
青森の田舎から出稼ぎに来たが、悪い環境から逃げ出し、青森に帰りたくても帰り方が分からず困っていたという。
同情した寅は交番のお巡りさんとお金を出し合って切符を買ってやり、帰り方を教える。
ちゃんと分かってるのかどうか…?
それでも心配の寅は、もし乗り継ぎの東京で迷子になったら、“かつしか・しばまた・とらや”を訪ねろと見送り出す。
一方のとらや。
そこへ、花子が訪ねて来て…。
それからすぐ、寅さんも帰って来て…。
とらや一同大困惑。
寅はここで花子の面倒を見ると言い出し…。
発育遅れではあるが、とてもいい子の花子。
かと言って幾ら何でもここにずっと置いとく訳にはいかず、花子から聞いた花子の事をよく知る青森の学校の先生に連絡を取る。
寅は花子の面倒で大忙し。
仕事を探してやるも、余所の男がちょっとでも話し掛けてきただけでも追い払う、超過保護ぶり。
おばちゃん曰く、寅さんの「花子~」という声を聞くだけでうんざり。
そんなある日、寅は花子から「寅ちゃんの嫁っこになる」と言われ…。
いつもならマドンナに一方的に想いを寄せる寅だが、マドンナの方から好意を寄せられた初の展開。(今後、シリーズでは何度かあり)
喜ぶべきところだが、とらや一同は素直に喜べない。
ヤクザな男と発育遅れの女。
差別・偏見的な見方も見受けられるが、もし、我々自身の身内だったら…?
すっかりその気になり、舞い上がる寅。
が、そこへ、青森から先生が迎えに来て…。
花子は先生と青森に帰った。
激怒する寅。
俺と一緒になるより、田舎に帰った方が幸せってのかよ!
悲しい事だけど、そうなんだよ、寅さん。
寅さんもとらや一同も親切だけど、見知らぬ土地に居るより、故郷でよく知ってる保護者の傍に居る方がいい。
寅はとらやを飛び出す。
とらやに寅から便りが。まるで自殺をほのめかすような…。
さすがに心配になり、さくらは差し出し先の青森の花子の居る学校へ向かう。
先生の保護の下、花子は用務員のアルバイトとして働いている。
明るく、元気に。
それを見て安心するさくら。
やはりこれで良かった。
実は寅もここへやって来て、花子の姿を見ると安心して、しかし悲しげに帰っていったという。
その後、ひょっとしたら…。
近くで入水自殺があり、ますます心配が募るさくら。
そんな時、ばったりと…!
今回も結局“フラれた”寅さん。
先生には奥さんが居て色恋沙汰と言うより、花子の幸せの為に身を引いたと言った方が正しいかも。(先生役に、田中邦衛。この人の人柄滲む好演)
フラれてもフラれても。
死にゃあしねぇよ!
そう笑い飛ばす姿こそ、寅さん!