「【”価値観の違う夫婦が見つけた幸福の味。”今作は上流階級出の奥様が、田舎育ちの夫を小馬鹿にしていたが、イザ夫が居なくなると寂しくなり器の大きな優しい夫の良さを感じ、夫婦仲を取り戻す物語である。】」お茶漬の味 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”価値観の違う夫婦が見つけた幸福の味。”今作は上流階級出の奥様が、田舎育ちの夫を小馬鹿にしていたが、イザ夫が居なくなると寂しくなり器の大きな優しい夫の良さを感じ、夫婦仲を取り戻す物語である。】
■妙子(木暮実千代)と茂吉が結婚して7、8年になるが、二人の間には子供はいない。
上流階級で生まれ育ったムッチャタカビーで夫を軽んじる様な態度を取る妙子と、信州の田舎育ちの茂吉は、共に生活をする中でお互いに齟齬を感じながら過ごしてきた。
ある時、妙子はむしゃくしゃしたのか、神戸、須磨の友人のところへ一人で遊びに行ってしまう。その留守中に、茂吉は急に海外出張が決まり、妙子と連絡を取ろうとするが結局一人で海外に旅立つのである。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・今作では、序盤、妙子は茂吉の事を“鈍感さん”などと、ヒジョーに失礼な綽名で呼び、嘘をついて友人達と温泉に行ってしまう。
妙子は、茂吉に対し、ムッチャタカビーな態度を取り続ける。茂吉が話があると言っても、座らずに夫を見下ろす様に話をするし、茂吉がご飯に味噌汁をかけて食べる姿を見て、小馬鹿にしたような態度を取るのである。
・妙子の姪、節子(津島恵子)も、見合いの場を抜け出してしまい、遊びに行ってしまったり、茂吉の部下とラーメンを食べたり、パチンコをしたり・・。
ー この辺りは、当時の女性の新しい生き方を描いているような気がするのである。ー
・茂吉は会社が終わっても、真っ直ぐに家に帰らない。パチンコ屋に寄ったり、居酒屋でビールを飲んだり。キッツい性格の妙子のいる家は安らげないのであろう。
だが、茂吉は自分を軽んじたような態度を取る妙子をキツク叱るような事はしないのである。オッカナイのか、器が大きいのか・・。
・だが、茂吉がある日、急に海外出張が決まり、一人で神戸、須磨の友人のところへ遊びに行った妙子に連絡を取ろうとするも、捕まらず彼は一人で海外へ出かけるのである。
・帰宅した妙子は、茂吉の連絡の仕方が悪い、とか言いながら狼狽えている。すると、そこに飛行機の故障で引き返して来た茂吉が夜中に帰宅する。
茂吉は、腹が減ったなあと言いながら、女中が寝てしまったので妙子と台所に行き、御櫃に入ったご飯を見つけ、妙子もぬか漬けの胡瓜を包丁で刻んで出して、二人で食卓を囲み、軽くお茶漬けを食べるのである。
■するとその最中に、妙子は今までの自分の茂吉に対する態度、言動を泣きながら詫びるのである。そして、茂吉はそんな妙子を慰めながら、映されないが、彼自身も少しウルウルしているのである。
キット、茂吉は辛かったんだろうなあ、と思ったシーンである。
<今作は、上流階級出の奥様が、田舎育ちの夫を小馬鹿にしていたが、イザ夫が居なくなると寂しくなり、器の大きな優しい夫の良さを感じ、夫婦仲を取り戻す物語なのである。
夫婦愛って何だろうという結構重いテーマを、軽やかなコメディタッチで描き上げ、鑑賞後の余韻も佳き作品を作る小津安二郎監督は、矢張り名監督だと思います。>
