劇場公開日 2022年10月28日

「ポケ戦についてもちょこっと書きます」王立宇宙軍 オネアミスの翼 KIDOLOHKENさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 ポケ戦についてもちょこっと書きます

2025年9月21日
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バブルのころには色々な映画が作られた。例えば「私をスキーに連れてって」。実にファッショナブルで軽くてバブリーだった。お小遣いでひと冬にスキーに何回も行くなんて。しかも新車で。なんて時代なんだ。・・そういった映画はバブルという時代の波にうまく乗れた人にとって、とても楽しくて。自分もこうなろうっ・・て感じで見られた映画であっただろう。私はというと、バブルに乗れなかったみじめな人間であった。そういった人間を描いた唯一の大成功作品が、このオネアミスの翼であろう。ここに登場する主人公は女性にモテない。彼女もいない。朝起きた時からため息をついている。やることがない。給料はいいから仕事に行けば金は貰えるけど。仕事の内容は薄っぺら。やる気も出ないので人間も薄っぺら。そんな男がある日・・・という話で。
生きる希望やモチベーションに目覚め、ぐいぐいと力強くなっていく主人公に自分を重ね合わせ、おおいに感動したものだ。これは実にこの世代の若者たちの心情にあった作品だったと思う。
一方でこの作品を見た宮崎駿などの大御所たちは酷評した。こんな戦争、こんな軍隊があるわけないと。私はは何を言ってるんだ?と思った。軍隊があるわけない?は?そんなこと、この映画で問題にしてるんじゃないのに、なんでそんなとこを見て酷評するのかと。しかし、戦争に行ったり戦争を体験したりした人からすると、そこは重要な問題なのであったようだ。軍人を描いているなら、ちゃんと戦争を描いて欲しかったのであろう。そういうこだわりがあったんだと思う。
この作品は着想の独創的だし。映像的にも。新しい試みがなされていて、脚本は完璧だ。坂本龍一の音楽が主人公の心境、この映画で伝えたい事にぴったりハマっている。監督は若いし。
バブルにのれず惨めだった私は何度もこの映画を見に行って、自分を励ましたものだ。そしてこの監督の未来に期待した。まだ20代前半で、これを作り上げたのはすごい。と。
しかるにその後、この監督がどうなったか・・
彼が脚本を書いた「機動戦士ガンダム ポケットの中の戦争」についても、ちょっと書いてみましょう。
ネタバレ注意
『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』は、作者自身が戦争を知らない自分を子供の視点に置き換えて描いたように見える点は発想として評価できる。しかし実際の内容は、戦争を真正面から描く力も覚悟もなく、寓話的に「悲しいね」で片づけた薄っぺらい物語に過ぎない。子供の無邪気さと戦争の残酷さを対比させる試みも、結果として教科書的で説教臭く、まじめなだけで面白みがない。戦争のリアリティや兵士の生々しい葛藤は作り物の領域を出ていない。出ていないというより出せるわけないのであって、そもそも戦争を知らないものが戦争など描くべきではない。少しは期待してみたがブランドに頼ったフイルムメーカーからの注文をそつなくこなしただけの作品だった。

まあ、ガンダムで続編かなんか作ってくれと注文されたら、このぐらいのもんしか普通出来ないでしょう。しかたないっちゃしかたない。彼の持ち味からしても。そしてこの後、パッとしなくなっておわってしまったのはとても残念だ。・・きっと頭が良すぎて大衆娯楽的なものが書けなかったのであろう。

KIDOLOHKEN
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