劇場公開日 1963年11月16日

「もしかしたら最高傑作」江分利満氏の優雅な生活 KIDOLOHKENさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 もしかしたら最高傑作

2025年12月8日
PCから投稿

主人公の名前は、英語の “エブリワン” に由来する。
どこにでもいるような、一人のサラリーマンの日常を描くだけの前半。
こういう作品を撮れと言われて、監督はどう思っただろうか。
岡本喜八は天才なので、「これは俺の腕の見せどころだ」と喜んだのではなかろうか。

とにかく、あの手この手のカメラワークでとても面白くできている。
岡本喜八はとてもワイドレンジな監督で、やくざ者、コメディ、シリアスと色々撮っている。
どれが本当の彼の味なのか――。
そんな中で私は、これが一番彼の持ち味が出ているような気がする。

そして、真ん中のあのシーンの感動することといったら。私はこの作品を、岡本喜八ファンならずとも、日本映画のファンならば絶対に見なければいけない作品として強く推したい。

しかるに困ったのは後半部分だ。
親父が戦争でやらかしたことなどを、うだうだと、いつまでも描き続ける。岡本喜八も、やりたくなかったのかもしれない。これは他人が書いた脚本で、そこのところに興味を持てなかったのではなかろうか。そこら辺はずーっとアニメーションになっている。まあ、この辺の歴史とか事実をあまり知らない人が見たら、これはこれで刺激があって面白いかもしれない。でも、ちょっとでも知っている人が見ると、ただただ退屈なだけだ。

だからあなたがこの名作を見て、そのアニメの部分が退屈だと思ったら、即座に椅子から立って酒を取りに行くことをオススメする。

KIDOLOHKEN
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