劇場公開日 1981年3月14日

「群集シーンは観るべき値打ちがある」ええじゃないか あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0群集シーンは観るべき値打ちがある

2020年7月31日
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鑑賞方法:DVD/BD

世直しとは、革命のこと
レボリューションであって、クーデターではない

ええじゃないかとは、人間は自由だということ
人は他者に抑圧されてはならない

では明治維新とは何か?
それが本作のテーマだ
そしてまた60年安保闘争敗北の記憶を投影している

薩長とは共産党のことだ
ええじゃないかの集団は国会に突入しようとする学生デモ隊だ
共産党は学生運動を扇動し利用している
その裏で薩摩が琉球にしたようなことをやっているのだ
幕府はもちろん政府の体制のこと

米国で自由と市民の概念を得た主人公を泉谷しげるに配役するのは、だから当然なのだ
ロックンローラーを主人公に配役することは必須だったのだろう

彼を配役すれば、釣り合うのは桃井で正しい
しかし出来上がった映画は2人とも軽すぎた
泉谷は画面に存在感を埋めきれない
桃井はテーマ性を希薄化させてしまう

脚本と演出も撮影も何もかも、監督がこだわり抜いたのはわかるが、漫然としている

結局テーマを明確にうちだせないまま、クライマックスを迎えてしまう
だからカタルシスも不発に終わってしまうのだ

素晴らしい幕末の群集シーンがもったいなさすぎだ

両国の見世物小屋の賑わいは、フランス映画の天井桟敷を思わせる
舞台の時代もほぼ同時期だ
ええじゃないかかんかん節は米国帰りの主人公に因んでいるようで、じつはフレンチカンカンから来ていると思う

そして日本橋でのええじゃないかの群集への幕府陸軍ライフル部隊の発砲は、デモ隊への武力制圧シーンそのものだ
60年安保闘争でもあり得た光景だ

それでも主人公は止めようとはしなかった
ヒロインはこれで済ませないと、主人公の血で濡れた地面に突っ伏せて血で赤い土を握りしめるのだ

イトマンは仇の薩摩侍を殺した血で赤い帆を染め上げる
薩摩は新政府の中核だ
つまり彼は反日の紅い旗を掲げて琉球に帰還しようと海に乗り出すのだ

果たしてこれで一般観客に共感を得て、良い興行成績を得られるなどと考えるのはどうかしている

むしろ確信犯的に自爆する積もりだったのだろうと思う

しかし群集シーンは観るべき値打ちはある

あき240