英霊たちの応援歌 最後の早慶戦のレビュー・感想・評価
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タイトルなし(ネタバレ)
昭和54年、早慶の大学野球は、選手のみならず応援する若者たちも青春を謳歌していた。
翻って、昭和18年春、文部省は六大学野球連盟の解散を厳命・下達する。
すなわち、大学野球は、もう出来ないということだ。
彼らのなかに、早実時代からバッテリーを組んで来たエース・三上(中村秀和)と捕手の秋山(永島敏行)もいた。
困難の末に開かれた最後の早慶戦。
その中に、三上の姿はなかった。
海浜予備学生を志願して入隊していたからだ。
試合後、秋山らも海兵団二等水兵として入団した・・・
といったところからはじまる物語。
最後の早慶戦に焦点を当てた作品ではなく、太平洋戦争終盤の学徒出陣、特攻隊員に焦点を当てた作品。
主演の秋山役・永島敏行もさることながら、エース三上を演じた中村秀和が繊細さを有しており、すこぶる良い。
映画出演は本作のみのようで、西田敏行の実弟とのこと。
特攻で命を散らす学生たちは、早稲田の学生たちだけでなく、他校の運動部員も多く、彼らの短いエピソードも巧みに描かれている。
特に、銀座通りの各店を順番に思い出すシーンがいい。
マネージャ役の勝野洋、野球を辞めて演劇青年と転じた本田博太郎も好演。
記録映像も交えた岡本喜八の演出はテンポもよく、ドライ。
ただし、演出のキレがいいので、最終盤の特攻シーンがカッコよく見えてしまうという難点も。
DVD特典収録の監督インタビューでも「試写後、「カッコいい」という言葉も聞こえ、マズいなぁと思った」と答えている。
出征前、防空壕に託された300ダースの白球は、散華した若者たちの魂か。
戦争でむなしく散らなければ、現代の若者のように、青春を謳歌出来たはずなのに・・・という無念が心に沁みる。
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