宇宙人東京に現わるのレビュー・感想・評価
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二年前のゴジラに影響を受けたであろう核の平和利用がテーマ
監督は『銀座カンカン娘』『安珍と清姫』の島耕二
脚本は『赤穂浪士(1961)』『椿三十郎』『天下の御意見番』『待ち伏せ』『乱』の小国英雄
日本初カラー特撮映画
1956年公開の大映作品
反核兵器がテーマの1954年公開『ゴジラ』に影響を受けたのだろうか
パイラ人のデザインは岡本太郎
宇宙人というとそれまで地球人とほぼ同じ姿に描かれていたようだが初めて全く別の姿として表現されているそうだ
それがとても粗末な着ぐるみだが昭和31年当時の手探り状態の日本映画なら仕方があるまい
監督も脚本家もSF映画の専門ではなく全くの畑違いはそれだけ当時人材不足だったのだろう
それでも誰かが初めにやることになる
今の時代の感覚なら嘲笑を浴びる類の作品だが広い目で見て欲しいものだ
誰もやらなかったことに挑戦した心意気は買いたい
パイラ人が話す言葉はまるでお風呂の水の排水音のよう
字幕スーパーで補足
地球に優しい
宇宙人といえば地球侵略だがパイラ人は違う
「核兵器反対」「地球に激突する可能性が高い天体が近づいている」というメッセージを伝えるためにわざわざ
宇宙道徳らしい
この作品は核廃絶ではなく核の平和利用がテーマのようだ
矛盾しているようだが世の中そんなものだ
天体爆発のために世界各国の核兵器は全て活用されたようだがこれからのもしもに備えて核兵器は製造され続けるに違いない
今は原発事故も影響し反核一色だが教養が少しでもある人なら時代の違いをもう少し理解して欲しいものだ
実際にロシアやアメリカが核兵器全てを廃絶する可能性はほぼない
やはり現実は渋い
中に人が入っている丸出しのパイラ人やフワちゃん騒動以上に
配役
小村芳雄教授の助手の磯辺徹に川崎敬三
徹の父で生物学者の磯辺直太郎に南部彰三
透の母の磯辺徳子に目黒幸子
東京城北天文台の長として天体観測に勤しむ天文学者の小村芳雄に見明凡太朗
小村教授の娘で幼稚園の先生をしている小村多恵子に永井ミエ子
水爆より強力な兵器を製造できる物質を開発した物理学者の松田英輔に山形勲
英輔の妻の松田清子に平井岐代子
英語が堪能な天文台通信係にフランク・熊谷
ロケット打ち上げ顧問の博士の高島に河原侃二
帝国劇場のトップスターの青空ひかりに苅田とよみ
青空ひかりに似せて地球人の姿に変身し天野銀子と名づけられたパイラ人第一号に苅田とよみ
平野健一に小原利之
飲み屋「宇宙軒」お花に岡村文子
松田家の書生の三吉に渡辺鉄彌
パイラ人第二号に八木沢敏
パイラ人第三号に夏木章
パイラ人第四号に津田駿二
紳士振った男に斎藤紫香
船員に原田該
泥客に泉静治
芸者に花村泰子
用心棒に谷謙二
新聞記者の秀野に杉田康
警部に早川雄二
パイラ人の造型が素晴らしい
当時の作品としては珍しく宇宙人が地球にやってきて地球人と戦うという話ではなく、地球人の原水爆開発を止めにくるという物語。
しかもそのやってくる宇宙人がどこからどう見ても悪役にしか見えません。
ヒトデのようなパイラ人。そのデザインは優れています。
出鱈目な映画。 色を付けたからと言っても脚本が破綻していたのでは、...
出鱈目な映画。
色を付けたからと言っても脚本が破綻していたのでは、元も子もない。
余り古さを感じないのは、今も同じ様な事をやっているからだと思う。日本の伝統技術と言うには程遠い。寧ろ、こう言った出鱈目を見せられて来た我々世代をあわれんで貰いたい。
断言する。私は見ていない。始めて見て、ズッコケた。
当時の風景とか、当時は人工衛星を打ち上げる事が世界的に望まれ、競争を米ソでやっていた時期。そう言った目で見れば、もっとシリアスに作って貰いたかった。
人工衛星を人類最初に打ち上げたのは、ソ連のスプートニク1号で、1957年10月3日だったかなぁ。私はその直後に生まれたが、打ち上がったのをなんとなく実感するのはどうしてだろう。ガガーリンはうっすら、テレシコワははっきり、アームストロングは実に明確に覚えている。しかし、人類は未だに未知との遭遇はセずに、混迷しきっている。もうすぐ、75年。そろそろこの世ともおさらばしなけりゃならない。のに。
1956年は日本の特撮のカラー化元年だったのです
1956年1月公開、大映作品、カラー作品
本作が日本の特撮映画初のカラー作品です
円谷英二のカラー特撮映画「空の大怪獣 ラドン」は同年12月の公開です
面白いです
そしてしっかりと作られています
失望感はまったくありません
特撮ファンでまだ観てないならもったいないことだと思います
冒頭の井の頭線が昭和31年の時代をとても感じさせます
和装の女性の女性がとても多いと感じます
テニスコートのシーンがあります
でも皇太子と美智子様のテニスコートの愛の出会いは1957年のことですから
これは当時の憧れのハイクラスな生活であるというシーンです
東京タワーにとても良く似たでも赤く塗装されていないグレーの鉄塔が登場します
東京タワーは着工は1956年6月、竣工は1958年12月ですから完成予想図で作ったのでしよう
あと電話がご近所さんの電話のある店からの呼び出しです
当時は電話が個人宅にはまだまだ普及してないのです
大昔の映画で電話番号の後ろに(呼)とかついているのを見ますがこれのことです
さてお話しは、天体Rが地球との衝突コースにあるとパイラ人という宇宙人が円盤で地球に飛来して警告してくれるというものです
衝突すれば人類は滅亡するが、地球上の全ての核兵器をそれにぶつければ破壊可能であり、人類滅亡を回避出来るというのです
当時は核開発競争の真っ盛り
1952年には米国が、1953年にはソ連が水爆を完成させます
1954年はあの「ゴジラ」のモチーフになるビキニ環礁での水爆実験があります
この状況を受けて本作公開の前年の1955年には有名な「ラッセル=アインシュタイン宣言」が行われます
イギリスの哲学者ラッセル、物理学者アインシュタイン他11名の一流科学者が連名で核兵器の廃絶と科学の平和利用を訴えた宣言です
本作はその宣言の精神にのっとって製作された作品と言えるでしよう
高度の知性を有する宇宙人からの警告とは、この科学者の宣言の暗喩であるという訳です
「妖星ゴラス」は1962年公開です
おそらく本作が原型だと思います
ゴラスが赤色矮星なのは本作が由来かと思います
地球が他天体が衝突する映画は3パターンあります
1. 諦めて少数でも宇宙に逃れる
2. 地球ごと衝突コースから逃げる
3. 他天体を破壊する
1 は1951年の「地球最後の日」
2はご存知「妖星ゴラス」
3は本作と1979年の「メテオ」、1998年の「ディープ・インパクト」と「アルマゲドン」です
実は4つ目があって、それが玉突き作戦です
ロケットを高速で他天体にぶつけて衝突コースから軌道を少しずらすという作戦です
2022年9月実際にNASAが小惑星で実験して成功したそうです
我々はもうSF映画の領域に足を踏み入れかけているようです
円盤騒ぎ
どこかの国の人工衛星では?
某国の新兵器か?
なにやら謎の気球騒ぎに似ています
調査の為に超小型ロケットが登場します
東大糸川教授のペンシルロケットです
1956年4月に初発射実験に成功しています
日本の宇宙開発の始祖です
日本のロケット開発は全てここから始まったのです
世界初の人工衛星のスプートニク1号の打ち上げは1957年10月のことですから、本作公開の1年9ヶ月後です
アメリカはまだ計画段階でした
日本は人工衛星どころかあのようなおもちゃのようなロケットでしたが、それでも宇宙開発競争に負けずに取り組んでいる光景が本作に紹介されます
やがて天変地異が起こりはじめ、人々の避難がはじまります
防空頭巾、ゲートル巻きの姿です
自衛隊も発足は1954年7月なので、チラリと登場します
特撮は的場徹
この人の名前は特撮ファンならばお馴染みのはず
後にウルトラQ、ウルトラマン、ウルトラセブン、怪奇大作戦、怪傑ブースカ、宇宙猿人ゴリの特撮を担当しているのですから
1920年生まれですから、円谷英二の19歳も下です
ちなみに円谷の一番弟子の有川貞昌は1925年生まれですから、的場よりさらに5歳下です
中野昭慶は1935年生まれになります
この人は大映の特撮の基礎を作ったといって良い人です
もともと日活の多摩撮影所の技術部が振り出し、その後合併があり大映の社員となります
1946年に戦争から復員して大映東京撮影所の特撮課に配属され実質的に彼が切り盛りすることになります
それが的場の特撮のキャリアの原点です
円谷英二との接点は、円谷が大映の嘱託として、1949年の「虹男」と「透明人間あらわる」他2本を撮ったときだと思われます
円谷が東宝から離れていたときのことです
この時に円谷から直接特撮の指導を受けたのです
円谷は48歳、的場は29歳でした
1965年には円谷特技プロダクションに請われて移籍します
ウルトラシリーズの始動に向けた人材強化だったわけです
その実力はその後の作品が証明しています
なにより本作の特撮の高いレベルが円谷英二をしてこの人を招くしかないと思わせたのです
マットペイントの効果的な使用、巨大望遠鏡の美術セットの本物にしかみえない重量感や質感の表現
潮汐作用による天変地異、ビルの損壊のミニチュアワーク
どれもこれも素晴らしい!
洪水は1950年のジェーン台風の大阪の大洪水の記録映像かと思わせるほど
赤色矮星のX接近による大気の高温化の表現もなかなかです
宇宙人のパイラ人はヒトデ型で中心に大きな目玉があります
デザインは大阪万博で太陽の塔をつくることになる岡本太郎です
2022年に開催された大規模な岡本太郎展で実物のデッサンを見ました
大変感激しました
大阪のあと、東京、愛知と巡回展も行われご覧になった方も多かろうと思います
なかなかインパクトのある姿です
クローズアップのシーンではウレタンのような素材で作られていて立派に実在感がでています
さすがに多数が登場するシーンは布切れを縫い合わせたいものを被っただけのショボいものですが照明を暗くしてバレにくくしています
それにしても1956年はなんて素晴らしい年なのでしょうか!
1月は本作で幕をあけ、12月は「空の大怪獣ラドン」で締めくくられたのです
どちらもカラー作品なのです
1956年は日本の特撮のカラー化元年だったのです
地球に警告する。
Amazon Prime Video(シネマコレクション by KADOKAWA)で鑑賞。
パイラ人のデザインを岡本太郎が手掛けたことで有名な日本初の総天然色による特撮映画。特撮を担当したのは後にウルトラシリーズなどで活躍する的場徹。パイラ人が地球人女性に変身するシーンや、新天体R接近による大津波のスペクタクルなど、その手腕が遺憾無く発揮されていました。
パイラ人は自らの文明が原水爆によって滅亡寸前になったことを教訓に、宇宙道徳に基づいて行動している種族。
地球でも同じことが繰り返されようとしているのを察知し、事態を回避しようと警告しにやって来たのでした。
彼らが活動の前線基地として日本を選んだ理由は、地球上で唯一、原水爆による直接的な被害を受けた国だからでした。
「Rの衝突を回避するためには、地球上の全ての原水爆をRに撃ち込むしかない」とのパイラ人の助言に従い日本の科学者たちが働き掛けますが、核保有国は首を縦に振らない…
この期に及んで核以上の破壊力を発揮する新物質を狙い、某国エージェントが科学者を拉致監禁し、製造方法を差し出せと迫る始末。滅亡を前になんの価値があると云うのか?
人類が迎えた結末は希望に満ちたもので、本作のメッセージが今尚色褪せないものであることを痛感しました。一刻も早くこのメッセージが色褪せることを願って止みません。
[余談]
パイラ人が出現する際に発せられる効果音は、後にガメラの回転ジェットに流用されましたことを知りました。
※修正(2023/03/19)
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