劇場公開日 1953年3月26日

  • 予告編を見る

「魔性の映画」雨月物語 悠さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0魔性の映画

2025年6月26日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

映画史上最高傑作なんて称号をみだりに与えてしまうと、今後困ったことになるだろう。だから多くの批評家やアマチュア評論家は文末に"の一つ"とつけることで誤魔化すが、僕は言い切ってしまう。2025年現在の映画史上の最高傑作は溝口健二の『雨月物語』である。そう言い切りたくなる魔性がこの映画にはある。
フレームとはハサミであり、映画とはデパージュであると思っていた。北野武は『HANA-BI』で貼り絵をモチーフにしたのは彼のスタイルと非常に合っている。しかし、この映画におけるフレームは認識であり、生の実感である。それを成し得た映画監督は私の知る限りらジャン・ルノワールぐらいだ。
このような優美なフレーミングはサイレント映画時代の名残というのが、僕の持論だ。だから、ルノワールの音の使い方は少し奇妙だ。必ずしも必然性があるとはいえない。しかし、溝口健二の音は映画に息づいている。不思議だ。並の監督なら『雨月物語』に水の音や水のような音を鳴らすところを溝口はそんなことをしない。彼はフレームの中のもの、認識の範囲内のもの、に対しては音をつけることなく表現しフレーム外の見えざる認識できない"何か"を音で表現してしまった。
ところで、最近『けものがいる』という映画でレア・セドゥに恋をしたのだが、早々に乗り換えることにした。京マチ子が美しすぎる。恋をした。あんまり乗り換えると惚れやすいやつと思われそうだが、審美眼には自信がある。信じてほしい。京マチ子を観るためにこの映画を観てもいい。

悠