劇場公開日 1953年3月26日

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雨月物語のレビュー・感想・評価

全43件中、1~20件目を表示

4.5溝口作品の傑作に触れる。祈りにも似た思いに触れる。

2020年4月29日
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鑑賞方法:DVD/BD

溝口作品でも評価の高い本作は、戦によって村人のささやかな幸せが無残に奪われていく様と、非常時に試される愛の形といった部分が際立った幻想譚だ。物語自体は江戸時代に執筆されたというが、1953年という製作年から考えると、観客の多くはこの戦争をつい数年前の「太平洋戦争」として受け止めたはず。家族と生き別れたり、死んだ妻と会いたいと思ったり、どうにかして生き残ろうと歯をくいしばる姿には、当時の人々の胸の内側が大いに反映されたことだろう。もちろん、湖に立ち込める不気味な霧に始まり、お屋敷にはびこる生き霊、そしてラストを飾る妻の逸話に至るまで、心の内側に隙間風が吹くような不可思議なエピソードとそれを見事にまとめ上げる演出には舌を巻くばかり。それら決して美の範疇で終わらせず、自宅に灯った明かりがもう二度と消えませんようにと、こちらを祈りにも似た気持ちにまで高める流れに、溝口作品の真骨頂を見た思いがした。

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牛津厚信

5.0憑依❤

2025年9月19日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
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チネチッタ

5.0邦画で最初に衝撃を受けた作品

2025年8月23日
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鑑賞方法:映画館、TV地上波

知的

難しい

驚く

最初に観たのは二十代初めで1970年代後半にテレビで。
邦画は黒澤明、小津安二郎、大島渚、勅使河原宏、今村昌平とか観てきていたが、何故か当時は溝口健二監督作品はほとんど名画座で上映する事が少なく見る機会がなかった。
観た印象は社会に出ていない学生には強烈すぎた。あまりにも多層的であり、また映像の美しさ、ストーリー展開の凄さ、日本の戦国時代という動乱期に生きた庶民の生き様や動乱に翻弄される姿。人間の欲望の有り様と家族への愛や共同体の姿など、映画で描かれる可能性の広さを初めて知ったのです。知的な作品、娯楽性の高いダイナミックな作品、映像が美しい作品、ストーリーが秀逸な作品、ヒューマニズムに溢れた作品は国内外の作品でかなり知ってはいたが、こんなに多重的で生半可なヒューマニズムでもなく、かつ美しいもの言語化が難しかった。今でも私の邦画のベスト1
その後は戦前の作品も観て、溝口さんの人間を観る神の視点に敬服。この映画はエンタメ性が高いから見てほしいです。
頭がヘトヘトなります。撮影は宮川一夫のモノクロの映像美。京マチ子さんの妖艶さ、森雅之の色気のある演技も見応えあります。観なければいけない作品。

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Kenku

4.0教訓めいたストーリーだが、映像美が素晴らしい

2025年8月4日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

泣ける

NHK BS 4Kで鑑賞。とにかく美しい映像。

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あっちゃんのパパ

5.0魔性の映画

2025年6月26日
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鑑賞方法:VOD

映画史上最高傑作なんて称号をみだりに与えてしまうと、今後困ったことになるだろう。だから多くの批評家やアマチュア評論家は文末に"の一つ"とつけることで誤魔化すが、僕は言い切ってしまう。2025年現在の映画史上の最高傑作は溝口健二の『雨月物語』である。そう言い切りたくなる魔性がこの映画にはある。
フレームとはハサミであり、映画とはデパージュであると思っていた。北野武は『HANA-BI』で貼り絵をモチーフにしたのは彼のスタイルと非常に合っている。しかし、この映画におけるフレームは認識であり、生の実感である。それを成し得た映画監督は私の知る限りらジャン・ルノワールぐらいだ。
このような優美なフレーミングはサイレント映画時代の名残というのが、僕の持論だ。だから、ルノワールの音の使い方は少し奇妙だ。必ずしも必然性があるとはいえない。しかし、溝口健二の音は映画に息づいている。不思議だ。並の監督なら『雨月物語』に水の音や水のような音を鳴らすところを溝口はそんなことをしない。彼はフレームの中のもの、認識の範囲内のもの、に対しては音をつけることなく表現しフレーム外の見えざる認識できない"何か"を音で表現してしまった。
ところで、最近『けものがいる』という映画でレア・セドゥに恋をしたのだが、早々に乗り換えることにした。京マチ子が美しすぎる。恋をした。あんまり乗り換えると惚れやすいやつと思われそうだが、審美眼には自信がある。信じてほしい。京マチ子を観るためにこの映画を観てもいい。

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悠

4.0タイトルなし(ネタバレ)

2025年2月8日
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まゆう

4.5なにもかもシームレス

2025年2月5日
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鑑賞方法:VOD

地獄も天国もあの世もこの世も時間もシームレスに繋がっていき、まさに映画マジックを感じながら観ました。
そしてそのシームレス感、違和感のなさは凄く日本的なのかもしれない。
あの世の姫が醸し出す肉体感、この世の戦と飢えの絶望感、それらが渾然一体となって画面に収まっていて、見事に眼福でした。

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あした

4.0まずまずの出来、という程度

2025年1月23日
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世界の映画史に残るほどの傑作、ということなので、観終わったらとてつもない感動が身を包み、大きなため息をつかなくてはいけません。

まあまあ面白いとは思いますが、それほどの傑作とは感じません。
羅生門もベネチア取った前提で観るので悪口言っちゃいけない雰囲気がありますが、それほどではないのと同じです。もう少し原作に忠実に幻想的、幽玄的な趣が欲しいところです。

この頃の名作、七人の侍、東京物語、浮雲なんかは確かに世紀の傑作と感じますし、溝口親分なら近松なんかの方がドラマチックで素晴らしいと思います。

しかし、森先輩という人は、羅生門、雨月、浮雲で三巨匠の主演とはすごい、小津の名作に出ていれば四冠達成でしたが。

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越後屋

4.0映画終活シリーズ

2025年1月23日
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鑑賞方法:VOD

1953年作品
ベネチア国際映画祭銀獅子賞受賞

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あきちゃん

4.5傑作

2024年11月26日
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鑑賞方法:その他

なんと妖艶な!さすが歴史的傑作、レベル違いの美しさでした。上田秋成の小説+モーパッサンの短編を元にした脚本は素晴らしく、ヒューマンドラマとしてのメッセージもバッチリです。観てよかった!時を超える名作とはこういう作品か。

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tomoboop

5.0教訓と伝奇

2024年7月11日
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雨月物語とは上田秋成(1734~1809)という歌人が書いた読本だそうだ。
読本とは江戸時代後期に流行した伝奇小説集。南総里見八犬伝や本朝水滸伝など、勧善懲悪や因果応報の作風で構成された大衆娯楽で貸本屋を通じて流通した、という。

映画雨月物語は雨月物語のごく一部であり、かつ雨月物語とは異なる話になっている。

『上田秋成の読本『雨月物語』の「浅茅が宿」と「蛇性の婬」の2編に、モーパッサンの『勲章』を加えて、川口松太郎と依田義賢が脚色した。』
(ウィキペディア「雨月物語(映画)」より)

二組の夫婦が出てくる。
源十郎は畑仕事の傍ら焼物(陶器)をつくって大金をえて味をしめる。
藤兵衛は侍になりたいという野望がある。

簡単に言うと、夫の利欲や不相応な野心によって妻に不幸がもたらされる──という話になっている。妻はいずれも、倹しくとも幸せに暮らせるならそれでいいと思っていて、じっさいに「あなたさえいてくだされば、あたしはもう何にもほしくはありません」という田中絹代の台詞もある。
ところが源十郎は欲をかいて焼物を売りに街へ出て、残してきた妻は落武者にころされてしまう。藤兵衛はにわか侍になったものの妻は遊女に成り下がる。

それら二組の夫婦の話をベースにしながら源十郎を幻惑する亡霊(京マチ子)の伝奇が絡んでくる。
市場で焼物を並べている源十郎のところへ明らかに高貴な出で立ちの女と女中がきて焼物を買い朽木屋敷へ届けるようことづける。

その段階では説明がないにもかかわらず京マチ子が演じていることによって亡魂にたぶらかされる源十郎という構図が見えてしまう。
つまり京マチ子の「明らかに現実的ではない妖艶」は彼女がこの世の者ではないことを最初から説き明かしてしまっていた。
羅生門と雨月物語には京マチ子の特別な女の感じ=不世出の女優の気配が濃厚にあったと思う。

源十郎は京マチ子演じる武家の亡魂に魅入られ朽木屋敷に入り浸って精気を吸われるが、神官に死相をさとられて呪文を身体に書いて難から逃れる。それは耳なし芳一のようだった。
やっと里へ帰って妻と子供に迎え入れられ束の間の幸福に浸る。が、それがアウルクリーク橋の出来事のような幻想落ちになっていて、実際には妻は亡くなり、子は村年寄が世話をしている。
一方藤兵衛の妻は「いくら言ってもおまえさんはばかだからじぶんで不幸せな目にあわなけりゃわからなかったんだね」と言ってふたりは再出発をする。

わかりやすい教訓に幻想が加わって映画の品位をあげている。加えて96分という尺に潔さがあった。
imdb8.2、RottenTomatoes100%と93%。

英題はUgetsuとなっていて海外でも絶賛されている。

『1953年にヴェネツィア国際映画祭に出品され、銀獅子賞を受賞した(金獅子賞は該当なしだったため実質的にはこの年の最優秀作となった)のを機に、1954年にアメリカ、1959年にフランスで公開されるなど海外でも上映され、フランスの映画雑誌『カイエ・デュ・シネマ』が発表した年間トップ10(英語版)では1位に選ばれるなど賞賛された。この作品もほかの溝口作品と同様に、ジャン=リュック・ゴダールやジャック・リヴェットなどのヌーヴェルヴァーグの映画人に大きな影響を与えた。

映画批評家のロジャー・イーバートはこの作品を「すべての映画の中でもっとも偉大な作品の一つ」と評しており、最高評価の星4つを与え、自身が選ぶ最高の映画のリストに加えている。マーティン・スコセッシはお気に入りの映画の1本にこの作品を選んでいる。BFIの映画雑誌『Sight & Sound』が10年毎に発表する史上最高の映画ベストテン(英語版)では1962年と1972年の2度のランキングでベストテンに選ばれた。また2012年のランキングでも批評家投票で50位、監督投票で67位に選ばれており、監督ではスコセッシ、マノエル・ド・オリヴェイラ、ミカ・カウリスマキらが投票した。2005年に『タイム』が発表した「史上最高の映画100本」にも選出されている。』
(ウィキペディア「雨月物語 (映画)」より)

映画は一家の主人が私欲や見栄で家族を蔑ろにしてはいけないと諫めている。あたりまえだとは思うし源十郎も藤兵衛も、おおげさに描かれているが、プリミティブな教訓にもかかわらず強い輪郭と説得力があった。今を生きるわたしたちは古い映画やそこにある教訓に対して解りきったことだ──という優越を持っているところがある。が、源十郎の欲や、藤兵衛の虚栄心はわたしたちが毎日ニュースや日常で見る俗物たちのカリカチュアになっていると思う。

『溝口健二監督作品『雨月物語』(1953年)、黒澤明監督作品『羅生門』(1950年)、衣笠貞之助監督作品『地獄門』(1953年)など、海外の映画祭で主演作が次々と受賞し「グランプリ女優」と呼ばれる。1971年(昭和46年)の大映倒産以降はテレビドラマと舞台を中心に移し、活躍の幅を広げた。大映社長永田雅一との恋愛関係が憶測された時期もあったが、生涯独身を通す。1965年(昭和40年)には、日本で初めての「億ション」、コープオリンピア(東京・表参道)を購入して話題となった。』
(ウィキペディア「京マチ子」より)

地味な田中絹代と派手な京マチ子のコントラストが雨月物語の印象を決定づけている。亡霊だとしても京マチ子にたぶらかされるのも悪くない、と思える一方で、貧しくてもにひたむきに夫を思いやってころされてしまう田中絹代に憐憫が湧いてくる。その動静のような陰陽のような対比が世の空しさと儚さを表象していると思った。

amazon prime Videoで見た。

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津次郎

5.0男は一旦の過ちで済むが、女はそうはいかない。

2024年2月18日
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マサシ

4.5時の試練に耐える作品

2024年2月14日
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中学生の娘と見ましたが、序盤から食いついていて結構楽しめたようです。

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takantino

3.5湖畔

2023年12月3日
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霧立ち込める湖を一艘の舟が進む。美しい画角。ボロ屋に入ったかと思いきや、案外中は広いというか、結構なお屋敷に化ける。ラストのマジック。カメラが戻れば空気が変わる。何が空気を変えるのか?追求した者が体現できる映像美。カラーだったらどう表現したか興味も湧く。
男の野心と女の情念。妖気のないラストにおいても哀しみが漂う。現代的に更新してよいテーマ性であるが、それはそれとして楽しめる一本である。

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Kj

3.5欲と功名心を戒める

2023年11月15日
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知的

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parsifal3745

4.5悩ましい

2023年9月13日
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鑑賞方法:VOD

泣ける

悲しい

知的

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ツネ

4.0京マチ子の妖艶さがベネチア映画祭の男性審査員をも惑わしたか…

2023年8月1日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

ここのところ、
少しまとめて溝口映画に接していたので、
録画していたこの作品も再鑑賞した。

最近の溝口映画鑑賞では、
長回し等の作風を意識していたが、
この作品では、その技法に関して、
あまり意識させられることは無かった。

テーマ的には、行き過ぎた金銭欲や出世欲を
戒める道徳論的な構成があからさま過ぎて、
作品の奥深さを感じることはなかったが、
この映画はむしろ映像美に浸るべき作品
なのかも知れないと思った。
壮大さはあったものの若干セット感のあった
「残菊物語」や「西鶴一代女」よりは、
リアリティ溢れる撮影・美術・演出による
映像美に進化した印象だった。

森雅之と京マチ子の組み合わせとしては、
黒澤の「羅生門」が思い出されるが、
相手の男性こそ
森と三船の違いはあるが、
彼らを惑わす女性は
京マチ子で共通しており、両作品に
金獅子賞と金獅子賞無しの年の銀獅子賞
をもたらしたのは、
ベネチア映画祭の男性審査員を惑わした
彼女の妖艶さではなかったか、
と想像もした。

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KENZO一級建築士事務所

3.5けっこう面白い

2023年5月24日
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吉泉知彦

4.0映画文法を網羅した素晴らしい作品の理由。

2023年4月29日
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鑑賞方法:VOD

笑える

単純

知的

内容は、江戸時代に記された話を元ネタに踏まえた、男3人女3人の人間模様愛憎劇。海外でも評価が高い理由が頷ける作品です。印象的な台詞は『人も物も所によってこうも値打ちが変わるのか?!』価値観の違いを戦争という時代に照らし合わせて表現した上手い台詞だと感じました。戦国時代の背景が第二次世界大戦後の日本を感じさせる様で印象に残りました。『死ななかった。死にきれなかった。。』この台詞も葛藤に苦しむ女性の性と願望が交差して非常に情念が伝わって苦しくなりました。印象的な場面は、最後の姫様(京マチ子)に鬼気迫る勢いで源十郎は、帰りを拒絶され『いいえ返しませぬ!』凍てつく様な白い吐息が、現実との乖離を表現していてとても怖かった。ありゃ夢に出るなぁ。印象的な状況は、戦争の後の無法地帯が上手く描かれていた事と、場面展開が緻密に計算され非常に見やすく映画文法に沿った基本をしっかり押さえあるので、台詞回し無しでもパントマイムの様に伝わる人間としての万国共通真実の片鱗を感じられる所が非常に秀逸で感動しました。流石日本を代表する三大映画監督だと勉強になりました。

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コバヤシマル

2.5やっぱり京マチ子、だよなあ…

2023年2月19日
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鑑賞方法:映画館

この作品は、スクリーンで観なきゃダメな日本映画の筆頭だと思っていて、やっと観ることが出来たのだが…
う〜ん…
これは過大評価されすぎ。
期待していた幽玄な美は然程でも無かった。
昔、淀川長治も、その美意識の程を絶賛してはいたが、それほどでも無かったなあ。
あと4Kのリマスターも、思ってたほど解像度が上がってなかったような…
あれが、ほぼオリジナルの映像と言われれば、それまでの話なのだが。

ゴダールをはじめ、名だたる海外の監督たちは何処がそんなに良かったのか?
確かに素晴らしいシーンは幾つもあるが(特に舟漕ぎのシーン!)
メインのストーリーと並行していた立身出世の話の方は特に必要は無かったし(ああいう女が犠牲になって男が出世する話が、とにかく溝口健二は好きらしいけど)、もっと奇怪な世界観にどっぷりフォーカスして欲しかった。

特にオープニングは、あの舟漕ぎのシーンから始めるべきだったなあ。
あそこまでの話の流れは、主人公を含めた三人の会話の中に取り込んでしまえば、コンパクトにまとまったと思うし、瀕死の男を乗せた舟との遭遇によって、冒頭から不穏で不吉な雰囲気バッチリで、掴みもオッケーとなったはず。

あと、俳優陣も京マチ子以外はイマイチ…
溝口健二も当然ながら演技には厳しかったようだが、実際のところ本作では、黒澤明ほどの数ヶ月にも及ぶ執拗な演技指導(というか鬼のようなダメ出し)などは、脇役や子役も含め、然程やってなかったんでは?
リアルを追求してるのは分かるが、結果、見えてくるのは、リアルに見せようと努力している職業俳優に過ぎなかったりする。
森雅之も田中絹代も、ホントはもっと出来たと思うけどなあ。

その点、京マチ子は素晴らしい。
彼女の存在なしでは全く有り得ない。
ああいった役柄で、ああいう絶妙加減な芝居が出来る女優は、たぶん他にいなかったと思う。
山田五十鈴でも出来たかもだが、ちょっと怖さの方が妖艶さより強く出て来そうだ。
大映の女優限定という事情もあっただろうが、たぶん『羅生門』を観て、溝口健二の頭の中では、もう京マチ子しか有り得なかったのでは?と思う。
なので本当は、もっと妖艶なシーンを撮りたかったんじゃないかな?
てゆーか、そっちをもっと観たかったよ。

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osmt