「Unfinished」飢える魂 抹茶さんの映画レビュー(感想・評価)
Unfinished
仕事や付き合いで訪れる様々な観光地で密会する中で不倫関係におちていく二組の男女をそれぞれ交互に描いた作品。
不倫に至るまでの男女の微妙な心理描写も良かったが、女の方の連れ子が自分の母親が亡き父の友人であった男と仲良くなることに対する心理的抵抗の描写が魅力的だった。
話自体は特に面白かったり深かったりすることはなかったけど、所々のシーンや演出で見せてくれる。
例えば、橋を挟んで大原美術館の建物をバックにスリーピースのスーツで立つ三橋達也と、昔ながらの瓦屋根の土蔵造の街並みをバックに着物姿で立つ南田洋子の対比の構図は美しかった。
芝令子演じる南田洋子は伏し目がちで身体を斜に構え、夫に仕える妻らしくしとやかに振舞っているのだが、三橋達也演じる立花烈の愛の告白の後に上目遣いに見つめる時のアップの顔は本当に美しく、これだけでもこの作品を観る価値があったと思った。
他にも、衣装が森英恵で、冒頭の轟夕起子のスタイリングもモダンでオシャレだし、南田洋子の着物の柄が毎回違っていて目につく。三橋達也の和装やスリーボタンのジャケットもカッコイイ。
個人的に凄いと思ったのが、オーケストラのコンサートを聴きに行くシーン。
パンフレットをアップで写したまま、拍手が起こり演奏が始まると、タクシーで帰るシーンに切り替わる。場面が切り替わっても、タクシーのラジオから流れているという体で、音楽はそのままシームレスに流れていて、演奏は第一主題に入る。演出も良いが、シューベルトの『未完成』とタクシーでの会話のやり取りの画との組み合わせが絶妙だった。
シューベルトの『未完成』が使用された映画はたくさんあるだろうけど、私がぱっと思い浮かぶのは『マイノリティリポート』のみ。他に何かあったかしら…。
コメントありがとうございます!
川島雄三作品は「洲崎パラダイス」→「幕末太陽傳」→「暖簾」→「しとやかな獣」→本作の順にアマプラにて視聴しました。まだまだ観ていない作品が多く、他の監督と違って中々つかめないなあと感じております。
CSでほとんどの作品を観られる時があったのですね!羨ましいです!「接吻泥棒」や「青べか物語」、「夜の流れ」などはアマプラでも有料レンタルになっていて、思い切ってソフトを買おうかなあと悩んでいるところです。
まだまだ不勉強で有名作品を観るので手一杯なのですが、あまり陽の当たっていない作品の中に優れた作品が眠っているのを痛切に感じており、活動写真愛好家さんのレビューはいつも参考にしております。これからもどうぞよろしくお願いします!
川島雄三監督は「幕末太陽傳」が一番有名なんですけれども、この「飢える魂」含め、秀作が多いです‼️以前、CSの衛星劇場で特集放送が行われ、川島雄三監督のほとんどの作品を観ることができました‼️