劇場公開日 1956年10月31日

飢える魂のレビュー・感想・評価

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3.5Unfinished

2023年8月4日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

仕事や付き合いで訪れる様々な観光地で密会する中で不倫関係におちていく二組の男女をそれぞれ交互に描いた作品。
不倫に至るまでの男女の微妙な心理描写も良かったが、女の方の連れ子が自分の母親が亡き父の友人であった男と仲良くなることに対する心理的抵抗の描写が魅力的だった。

話自体は特に面白かったり深かったりすることはなかったけど、所々のシーンや演出で見せてくれる。
例えば、橋を挟んで大原美術館の建物をバックにスリーピースのスーツで立つ三橋達也と、昔ながらの瓦屋根の土蔵造の街並みをバックに着物姿で立つ南田洋子の対比の構図は美しかった。

芝令子演じる南田洋子は伏し目がちで身体を斜に構え、夫に仕える妻らしくしとやかに振舞っているのだが、三橋達也演じる立花烈の愛の告白の後に上目遣いに見つめる時のアップの顔は本当に美しく、これだけでもこの作品を観る価値があったと思った。

他にも、衣装が森英恵で、冒頭の轟夕起子のスタイリングもモダンでオシャレだし、南田洋子の着物の柄が毎回違っていて目につく。三橋達也の和装やスリーボタンのジャケットもカッコイイ。

個人的に凄いと思ったのが、オーケストラのコンサートを聴きに行くシーン。
パンフレットをアップで写したまま、拍手が起こり演奏が始まると、タクシーで帰るシーンに切り替わる。場面が切り替わっても、タクシーのラジオから流れているという体で、音楽はそのままシームレスに流れていて、演奏は第一主題に入る。演出も良いが、シューベルトの『未完成』とタクシーでの会話のやり取りの画との組み合わせが絶妙だった。

シューベルトの『未完成』が使用された映画はたくさんあるだろうけど、私がぱっと思い浮かぶのは『マイノリティリポート』のみ。他に何かあったかしら…。

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抹茶