伊豆の踊子（1954）のレビュー・感想・評価

当時の風景に近い景色が観られることや普段着としての着物の着方なども自然で雰囲気を味わえる。
ただ、美空ひばりで幻滅する。演技も下手だし何よりおばさん臭い。そこは大学生役に華やかな見目俳優を使いカバー。野村監督もわかっているのだろう、踊り子より大学生の顔アップを多用している。
美空ひばり側の売り込みで作られた映画だから仕方ないのだが、野村監督もひばり母から文句が出ない程度に抵抗している感があり、さぞかし大変だっただろうなと。

この映画の中で、この踊り子一行に対して、宿屋の従業員が『この人達にご飯なんて』と言う場面がある。
明らかにこの一行を差別をしている。
「人前で演じる者」を総じて「河原乞食（差別用語）」と蔑視した歴史がある。
それは江戸時代までの話とされているが、昭和のはじめであってもこの映画の様に「ものごい、芸人は村へはいるべからず」と言った差別が存在していた。
さて、
最近の映画で「国宝」と言う映画がヒットしているが「歌舞伎」も全く同じルーツであると思って良い。
現代に於いては、国の宝として評価しているわけだが、
実は戦後間もなく（いや、僕の時代も）まで、日本人は芸人とか演劇をやる者に対して、見下していた歴史があると言う事を忘れてはならない。

この映画も見たが、内藤洋子さんの「踊り子」が僕のどストライク。百恵さんではない。

踊り子を美空ひばり、学生さんを石濱朗が、監督は野村芳太郎だ。
天真爛漫で美しい少女に魅入られた学生さんは、理不尽な状況に明るく耐えている姿に、己の生き方を見つめ直す。
お転婆娘キャラの美空ひばりにはちょっと合わないかもしれないが、伊豆の旅行きは風情があって、とてもいい。

美空ひばりが、ヒロインに扮する今に続くアイドル映画の元祖だと思います。
しかし、美空ひばりの歌は素晴らしいため最後まで飽きないで観ることが出来ると思います。
また、1954から見た昭和初めの雰囲気は自分には新しい感覚を味あわせていただけました。
すごく面白いとは思いませんが、日本の映画の歴史を辿る上で観ておくのはおススメです。