劇場公開日 2000年1月22日

「黒澤明の遺した創作ノートから映画化。」雨あがる 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5黒澤明の遺した創作ノートから映画化。

2022年8月1日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

脚本は黒澤明となっていますが、黒澤の創作ノートに台詞はなく、
覚え書きとト書だけですから、脚本は監督の小林堯史が原作と照らし合わせ、
創作ノートのエッセンスを色濃く忍ばせたと思われます。

2000年:監督は黒澤明の一番弟子・小林堯史。原作:山本周五郎の短編。
黒澤明は1998年に亡くなっています。
息子の黒沢久が葬式で「雨あがる」の映画化と監督を小林堯史に任せると
告げて完成したのが本作品です。

とても清々しい心洗われる作品。
私は特に『増水した川』に注目した。
本当に3日間位降り続けたのを、待っていたのではないか?
この増水した川の猛々しさ、自然の凄さが、無力な人々を浮き彫りにしている。

映画は剣術の達人だが気持ちが優しいのが災いして、
思うように仕官(藩主に仕える侍)になれない浪人に、
寺尾聰。
その慎ましい妻に宮崎美子(実に美しく清純)
夫婦愛の物語でもある。
そして黒澤明が特に言いたかったことは、勝者の優しい慰め。
それは敗者には耐え難き屈辱。プライドをズタズタに傷付けるのだ。
と言うこと。

剣術指南番への登用試験で、寺尾聰の腕前を試すため、下級武士が対戦する。
何人対戦しても歯が立たない。
焦れた藩主が寺尾に槍で掛かってくる。しかし藩主は敢えなく池に落とされる。
「ついつい大人げなく本気になり・・・」
寺尾の言葉に烈火の如く猛り狂う藩主。
このプライドをズタズタにされる藩主を三船敏朗の長男・三船史郎が演じているのも
何かのご縁。

この映画は品の良い、いい話ではあるが小品。
小林堯史はその後一人立ちした監督になり、
「博士の愛した数式」
「明日への遺言」
「蜩の記」
などの良作を撮っている。
最新作が「峠最後のサムライ」
好きな監督である。

琥珀糖
マサシさんのコメント
2024年3月26日

三船さんの息子さんですか?
やっぱり、二代目の為の映画なのかなぁ。でも、三船さんの息子さんと寺尾さんが逆の方が良かったかなぁと思いました。
いつもありがとうございます。

マサシ