劇場公開日 1962年6月15日

「運命の分岐点」秋津温泉 jarinkochieさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0運命の分岐点

2021年4月3日
Androidアプリから投稿

助けられた男より 助けた女の方が
最後は男に入れ上げてしまう

死にかけていた者と そうでない者が入れ変わってしまう

太宰治の出来損ないみたいな男に
新子(岡田茉莉子)は魅力を感じてしまったのだろうか

回復した男はグダグダしながらも 戦後の日本に意外と順応してゆく

温泉宿を継いだ女は 閉ざされた世界の中で
男との思い出も美化していったようにも思えた

この辺が恋愛のわからない処でもあるが
宿というものが〈待ちの姿勢〉である処も
関係していったのかもしれない

日本の敗戦で泣いたあの時が
彼女の終わりの始まりだったのだろうか
(今の日本を予想していたようにも感じられた… )

生きながらえることは大変であるが
そう立派なものでもなかったりする
それでも男には妻子がある

一方、女は温泉宿も失うことになる
妥協しなかった女は 決断しなかった女でもあり
〈拠り処〉すべてを失う

辛い恋愛の映画だった
そして恋愛にも〈純度の高低〉みたいなものがあるのだろうか… と思ったりした

jarinkochie