劇場公開日 1962年6月28日

「千葉県浦粕を舞台にした群像劇」青べか物語 たいちぃさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0千葉県浦粕を舞台にした群像劇

2022年12月18日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

大好きな川島雄三監督の未見作、ようやく鑑賞。
本作は、原作が山本周五郎、脚本が新藤兼人。当時の東宝が、かなり力を入れて作り出したと思われる総天然色作品。

現在の浦安(劇中では浦粕)を舞台にした群像劇で、喜劇もあれば悲劇的な出来事も綴られるが、全体的にはホッコラする温かみのある映画となっている。

物語は、東京から千葉県浦粕にやって来た“先生”(森繫久弥…本作の表記)は文筆業の男で、町に入った途端に「青べか」という小舟を買わされる。
浦粕の町で起こる様々な出来事を見る“先生”だが、この先生はそうした出来事を客観的に見ている傍観者の立ち位置を崩さない。
彼が左幸子に惚れられても、足が悪い乙羽信子と献身的な夫=山茶花究との連れ合うエピソードを聞いても、左卜全の若かりし頃の恋物語を聞いても、先生はやはり傍観者。

森繫久弥に次ぐ準主演のような存在がフランキー堺なのだが、彼は(特別出演)とのことだが、かなり出番が多い(笑)
また、フランキー堺は川島雄三監督作品には欠かせない俳優なので、毎度の存在感。

エピソードの中でも印象的だったのは、「“みその”の上りがおっ立つか?」というあたりの笑える場面、そして左卜全の恋愛相手が桜井浩子だったことだろうか…。

東宝としては、喜劇映画として宣伝していた様子は予告編でも見られるが、やや滑り気味の喜劇に見えた。
確かに観終わった後、楽しい雰囲気が残るのだが、微妙だった感じも残る。
黒澤明監督が山本周五郎原作「季節のない街」を映画化した『どですかでん』よりは、力抜けた感じが良かったとは思う。

それなりに楽しめる映画ではあったが、過大な期待は禁物。
現在では見られない東京湾の風景が見られるのは良かった。

<映倫No.12802>

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たいちぃ