劇場公開日 2007年10月27日

ヴィーナス : 映画評論・批評

2007年10月22日更新

2007年10月27日よりシャンテシネほかにてロードショー

年の差ロマンスであり、生き甲斐を問う青春ドラマでもある

どんなに老いても男は女の柔肌を追いかけるもの。でもそれは、壮年期までの性欲とは違うはず。機能するかどうか別として、とことん交わりメンタルにつながりたい。限りある生を実感するのに、これ以上の欲望はない。エロスを求め最期の炎を燃やしたい男と、若さをもてあまし虚ろな内面を抱えてさまよう女。対照的に思えるふたりが出会って次第に距離を縮め、やがてひとつに同化する。これは、とてつもない年の差ロマンスであり、生き甲斐とは何かを問う珠玉の青春ドラマでもある。

妻との別居も永くなり、めっきり仕事も減った往年の二枚目俳優が、決して綺麗とはいえない20代の女性を見初める。恋の場数を踏んできた老優はひと目で、反抗的に装う不機嫌な彼女の中の輝きを見抜くのだ。本当の愛を知らなかった女性は、最初はウザイと思った老人の透き通る瞳の奥にある、ロマンの灯に気づき始める。オスカー名誉賞の受賞時に、まだまだ現役を宣言した名優ピーター・オトゥールへのリスペクトに満ちた演出が心地よい。そして、これが映画デビューとなる無名のヒロインの、醜から美へと転じるメタモルフォーゼが素晴らしい。

ここには“高齢化×下流”という、この国にも通底する今どきの縮図も見て取れる。けれど、いつの時代も人生を終えようとする者と、これから人生を始めようとする者は、似た者同士。いずれも孤独で、生の意味を真剣に自問自答する存在だから。

清水節

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