スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師 : インタビュー
ジョニー・デップとティム・バートン監督の6度目のコラボレーションとなった最新作「スウィーニー・トッド/フリート街の悪魔の理髪師」が間もなく公開。映画評論家の森山京子氏が、映画の舞台となったロンドンで2人をキャッチ。インタビューの模様をお届けする。(取材・文:森山京子)
ジョニー・デップ&ティム・バートン監督インタビュー
「ティムから頼まれれば何だってやるよ」(J・デップ)
「バレエ以外はね(笑)」(T・バートン)
ティム・バートン&ジョニー・デップ初のミュージカル「スウィーニー・トッド/フリート街の悪魔の理髪師」。ダークな復讐劇と知ってはいたが、完成した映画を見て、殺しのシーンの躊躇のない残虐さと飛び散る血の多さには驚いた。ティムとジョニーの2ショット・インタビューになったロンドンでのジャンケット。まずはこのスプラッタ要素について聞いてみた。(T=ティム、J=ジョニー)
――ティム、あなたの作品では初のR指定になりましたけど、興行面でのリスクは考えませんでしたか。
T:「もちろん、そういうリスクはいつでもある。でも最初にスタジオとミーティングした時にはっきり言ったんだ。道徳的な面を考慮して血生臭いシーンを控え目に演出したプロダクションを観たことがあるけど、この映画ではそれはやりたくないってね。そういう控え目な演出を観るたびに、失ってしまったものがあると思えてならない。この作品はリアリティーを追求するものじゃなくてメロドラマなんだから、大げさにやらなくちゃならない。噴出する血は、スウィーニー・トッドの抑圧されてきた感情の爆発なんだ。グランギニョールの劇場ではバケツで舞台に血を蒔いたっていうからさ、そういうショー本来の精神に忠実に行うべきだと思った。スタジオ側もそれを理解してくれて、何の問題もなかった」
――それにしても血の色が強烈ですよね。
T:「色彩についてはいろいろ試してみた。血には鮮やかな深紅色を選び、逆にセットや衣装は色を抑えて、アクセントカラーを一部使うだけにした。逆にフラッシュバックのシーンはスウィーニーの人生で楽しかった時のことだからカラフルにした。ミセス・ラベットのファンタジーも同じだ。つまり色をキャラクターの感情に基づいて使い分けたんだ」
――ジョニー、あなたはいつもユニークな作品選びをすることで有名ですが、どうしてリスクを考えずにスウィーニーのように難しい役にトライ出来るのでしょうか。
J:「頑固さと無知なところがあるからだろうね(笑)。もちろん、より簡単に演じられる役というのもたくさんあるけど、今回はティムからの話だからね。ティムから頼まれれば何だってやるよ」
T:「バレエ以外はね(笑)」
J:「いや、バレエだってやるよ」
T:「いや、君がやるわけないよ」
J:「やってみるって(笑)」
――この役のどこに惹かれたのですか。
J:「アンジェラ・ランズベリーが出た舞台のビデオを観て、楽曲もかなり聴きこんだ。もっと最近のプロダクションのものも観たけど、これまでとは違った新しいスウィーニーをやってもいいんじゃないかと思ったんだ。もっとコンテンポラリーなパンクのスウィーニーをね。新鮮だったのは、この役は回りくどいところがない。単刀直入で、潤滑油になるような世間話なんて一切しないんだ(笑)」
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