ライラの冒険 黄金の羅針盤 : インタビュー
監督インタビューのパート2はネタバレあり。3月1日公開前、2月23~24日で先行上映も決まったので、いち早く映画を観た人はご覧あれ。原作と映画の違いについて、少し突っ込んで聞いてみた。(取材・文:編集部)
第2回:クリス・ワイツ監督インタビュー Part.2~原作と映画の違い
原作モノの映画化は、原作ファンの期待にも応えつつ、原作を知らない観客にもわかりやすいように作らなくてはならないという難題がある。また、2時間足らずの時間の中で表現しきれない部分はカットされたりアレンジされたりするのも、原作モノの常だ。「ライラの冒険/黄金の羅針盤」も基本的に原作を忠実に描きつつ、原作と異なる部分もある。原作ファンでもあるという監督が、どのような取捨選択を行ったのか?
※以下、原作や映画のネタバレを含みますのでご注意ください!
■原作と映画の違い、エンディング表現の秘密は?
――もともと原作が好きだったそうですが、どのあたりが?
「児童書として、ファンタジーとして、とにかく楽しめる壮大なスケールな物語であることもそうだけれど、それとは別に、科学的な宇宙観とか哲学的な思想とかが描きこまれていて、いろんなレベルでいろんな楽しみ方ができるということころかな。すごい小説だなと思ったよ」
――その原作を脚色するにあたって、今回はライラを中心として1本筋が通っているなと思いましたが、一方でライラが中心になっているため、コールター夫人やアスリエル卿の描写がちょっと少なかった気もしました。原作を2時間の映画の脚本にしていくにあたって苦労したところは?
「それもおっしゃる通りで、2時間前後に抑えるためには、“ライラの物語”というところに終始せざるをえなかった。僕自身も、コールター夫人やアスリエル卿の部分はちょっと少ないかなと思っている。ただ、脚本の初稿では、ライラの出ないシーンはないくらい彼女中心に徹底していたんだけど、彼女が旅に出ている間に、敵対する人々が何をしているのかということを説明するために、いくつか彼女が出ていないシーンも入れていったんだ。その理由としては、映画というものは、原作付きであっても原作読者の数より映画を観る観客のほうが多い。そういった意味でも、映像でアレンジしなければならないところが多々あるわけで、そのひとつの例が今回のエンディングなんです」
――原作のラストの少し手前で終わっていますね。
「それは何故かというと、原作のラストでライラの父が彼女を裏切り、親友のロジャーが死ぬわけだけど、映画では、なかなかそうした暗いところで終わるわけにはいかないんだ。だから、戦いに勝ってホッとして、これから彼女はお父さんを助けにいくんだ……というところであえて終わらせることにした。だから、アスリエルやコールターのシーンも少なくなっているわけだけど、どうしてもそうせざるを得なかった。その決断に後悔はしていないけれど、実は残りのシーンも撮ってあるんだ。だから、ディレクターズ・カットとして残りの部分も全部つなげて観てもらう機会を作りたいと思ってるよ」
――今回カットした1作目のラストを2作目の頭にもってくるんですか?
「それは僕も考えているよ。というか、(2作目は)そうスタートせざるを得ないだろうと思う。物語の流れ上、ロジャーは死ななければならないし、ライラの父が彼を殺さなければならないし、コールターとアスリエルがまた手を組まなければならない。それは変えることが出来ない。そういうことが起きたからこそ、結果的にライラが『私がひとりでダストの謎を解いてみせるわ!』と、他の世界に旅立っていくわけだからね。その旅立ちのシーンが原作1作目のラストだけど、そこにある程度の希望が含まれていたとしても、直前に起きる先ほど挙げた3つの出来事があまりにも暗くて重いものだから、映画のラストにもってくることは出来なかったんだ。スタジオからの『ハッピーエンディングに!』というプレッシャーもあったしね。ただ、繰り返しになるけど、そこは物語上どうしても描かなければならない。だから2作目の最初に持ってくることになると思うよ」
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実は原作通りに終わっていない映画版だが、それは本作がまだシリーズの導入部分に過ぎないことの証。原作読者や映画を見た人には気になる監督の発言。本当の「ライラの冒険」は、これから始まる!? シリーズ第2作「ライラの冒険/神秘の短剣」は果たしてどうなるのか? まずは「黄金の羅針盤」を見て、楽しみに待ちたい。