劇場公開日 2007年10月6日

「『殺しが静かにやって来る』の初見以来の驚愕だった。独裁政権はナチスの力をかりて、ゲルニカ市民へ、人類史上初の無差別攻撃(虐殺)を仕掛けている。」パンズ・ラビリンス マサシさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0『殺しが静かにやって来る』の初見以来の驚愕だった。独裁政権はナチスの力をかりて、ゲルニカ市民へ、人類史上初の無差別攻撃(虐殺)を仕掛けている。

2022年5月25日
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鑑賞方法:VOD

ファンタジーの形で語られるが、現実の歴史を語っている。このギャップが見事だと思う。同じ歴史を語った『ミツバチのささやき』を連想した。

日本のナショナリズムは世界と比べて、歴史が浅い。また、その純度も高いものではない。つまり『お国の為に』と言い始めたのは、つい80年くらい前。世界は、良くも悪くも侵略と植民の歴史が既にある。だから、日本人にはちょっと理解し難い話になってしまっている。僕も日本人なので、納得いかなかった。でも『殺しが静かにやって来る』の初見以来の驚愕だった。

オフェーリアはオフィーリアだから、この話はハムレットをリスペクトしている。そして、
母親がカルメン!2つの話を融合すると、日本人としても納得せざるを得ない。ファンタジーと言うストーリーの姿を借りて、逃れる事の出来ない過去と言う歴史を語っているのだと思った。カズオ・イシグロさんの『私を離さないで』と通じるところもある。違う所は、逃れられない歴史なのだから、泣いても良いと思った。この話は稀に見る傑作だ。

追伸 フランコ大統領の奥さんはカルメンと言う。
追追伸
現在の王様はフランコ大統領の死後、フランコ政権を引き継ぐ形で、王政復古した象徴の王様。日本と同じだが、フランコ政権は完全に否定された訳ではない。従って、フランコ政権と対峙してきた側のナショナリズムはどうなっているのだろうか。第二次世界大戦中、独裁政権はナチスの力をかりて、ゲルニカ市民へ、人類史上初の虐殺を仕掛けている。

マサシ
活動写真愛好家さんのコメント
2023年7月4日

マサシさん、コメントありがとうございます。いつか「ミツバチのささやき」とこの「パンズラビリンス」の2本立て観てみたいです。

活動写真愛好家
Gustavさんのコメント
2022年5月27日

マサシさんへ。僭越ながら独特な解釈に感服しました。この映画はラスト近くまで興奮して観ていたことを思い出します。ラストへの期待値を自ら上げ過ぎたのも、それまでが素晴らしかったからです。自分なりの答えを出せず、小さい不満が残ってしまいました。機会があれば観直したいと思います。有難うございました。

Gustav