「リアルに、想像力をかき立てるラストシーン」この道は母へとつづく シンコさんの映画レビュー(感想・評価)
リアルに、想像力をかき立てるラストシーン
「母を訪ねて三千里」などのように、母親探しの定番の物語ですが、この作品にはロシア社会の様々な問題が描き込まれています。
貧困,児童虐待,少女売春,人身売買まがいの養子仲介業者の横行。
そんな中、少年たちは彼らなりのルールに則って、したたかに生きています。
母親に会いに行く道中ワーニャは、養子仲介業者に追われたり、強奪に合ったり、また、人々の優しい善意に触れたり、救われたりします。
すさんだ社会でも、人々の心は温かい。
映画はワーニャの旅路を丹念に、リアルに追っていきます。
過度な演出はせず、ワーニャの健気な姿が感動を誘います。
クライマックス、業者の用心棒に追い詰められたワーニャは、恐ろしいばかりの勇気を見せつけます。
観ていて身も凍る思いがしました。
さすがに用心棒も心を動かされます。
それまで眉間に皺を寄せながら、必死に苦難に立ち向かってきたワーニャでしたが、母親に出会ったとき初めて、戸惑ったような、はにかんだような笑顔を見せます。
想像力をかき立てる、秀逸なラストシーンには、目が潤みました。
この映画は、新聞に載っていた実話を元にしている、と知って驚きました。
コメントする