劇場公開日 2007年8月18日

「夫婦関係が街の歴史と重なり合って…」長江哀歌(エレジー) KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0夫婦関係が街の歴史と重なり合って…

2022年3月24日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

相当時間をおいてからの再鑑賞。
以前はなかなか理解が及ばなかったが、
今回は興味深く観ることが出来た。

別れた相手を探す男女二人を淡々と描く、
何とも変わった雰囲気の作品だ。

それにしても、製作から16年経って
現在の中国共産党政権だったら、
このような映画製作を許可しただろうか
との思いに至る。
元々がダムに沈む街というネガティブな
背景の物語なので、
若干は割り引いて判断しないといけない
のかも知れないが、
中高層ビルマンションを背景とする中でも、
人身売買的な社会状況も含め、
貧しく廃退的な雰囲気を
つぶさに描くことが出来たのは、
北京オリンピック開催やチベット暴動の前
だったから可能だったのだろうか。
交錯することのない主人公二人の男女は、
それぞれ離婚こそしてはいないが、
長く別居していたにも係わらず
何故か相手に会いにダムで水没する街に
遥々やってきて、そして再び別れ去る。

若い頃に火事の現場に遭遇して、
やたら涙が出たことを思い出す。
それは家が焼失することにより
家族の歴史が消えていくような悲しみを
覚えたからだったが、
この作品でも、
二組の夫婦関係としての歴史が消える
ことを、
ダム建設によって街の歴史が消えることに
重ね合わせているのだろうか。

この年のキネマ旬報のベストワンに選ばれた
不思議な余韻を残す作品だ。

KENZO一級建築士事務所
NOBUさんのコメント
2022年10月14日

今晩は。
 コメント、ありがとうございます。
 今作は、中国の高度成長期を描いた作品ですが、三峡ダム建設で、政府から一方的に移住を強制された人々及び”そんなに長い間、出稼ぎに行っているのは、どうよ!”と思った映画でもありました。
 私は、学生時代から社会人になってからも中国に良く行っていましたが、年々人民の生活が悪くなってきているな、と思っています。
 特に最近は北京オリンピック前から加速した感がありますが、ロシア化が進んでいる事を実感します。
 大体、映画を公開中に一方的に中断させる国ってどうなんでしょうか。
 10月16日に、中国共産党大会が開催される影響でしょうが・・。
 映画位は自由に観れる国が、世界で一つでも多くなることを願っています。では。

NOBU