劇場公開日 2007年11月3日

「丸い夕日を見たかった。」ALWAYS 続・三丁目の夕日 アマポーラさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5丸い夕日を見たかった。

2007年11月12日

泣ける

笑える

幸せ

この映画には一定のパターンがある。各脇役がなんとなく「いけすかない人物」で登場し、やがてはすっかり「いい人」に成り変わるパターン。例えば、故あって「鈴木オート」に預けられる元金持ちの子女・美加は、その晩大盤振る舞いされた豚肉のすき焼きに「すき焼きは牛肉でしょ」とケチをつけ、せっかくの夕食を放棄する。ストリップ劇場の楽屋では、自分が身を置く環境と茶川への熱い想いとの間で苦しむヒロミに、先輩格の踊り子が「どうせ、夢なんかみたって・・・」と冷や水を浴びせかける。淳之介を再度引き取りに訪れる実の父親にしても、最初はいかにも血の通わない見事な悪役ぶり。
そして、そのいわば逆をいくのが、唯一、茶川先生を中心に展開する芥川賞ドタバタ騒動。不安より楽観や期待が大きく先行する。ここでは芥川賞受賞可否ばかりがいたずらに取り沙汰されるが、賞の最終選考に残っただけでも大変な価値があることを、どの時点かで茶川に誰かが語りかけてもよかったような気がする。
いずれにしても、ドタバタを含めこの映画はやたらと泣けるし、時々笑えるし、すばらしい。「総天然色」のこだま号や羽田空港シーン、そして首都高速が出来る前の日本橋の登場は特に高年齢層を歓喜させずにはおかないだろう。なにより、後味のよい終わり方がすばらしいが、一つだけ不満を言わせてもらえれば、「三丁目の夕日」というタイトル通り、原作漫画にしばしば登場する真ん丸い紅い落日を一度はゆっくり眺めさせてほしかった。

アマポーラ