図鑑に載ってない虫 : インタビュー
「イン・ザ・プール」(05)、TVシリーズ「時効警察」を手がける三木聡監督の最新作「図鑑に載ってない虫」は、伊勢谷友介演じる主人公が、死後の世界をルポするために“死にもどき”と呼ばれる虫を探す旅に出るという“脱力系”コメディ映画だ。eiga.comは、「バベル」でアカデミー賞候補に選出され、本作ではリストカットマニアのSM嬢を演じた菊地凛子、三木作品にはおなじみのふせえり、岩松了、そして三木聡監督の4人に話を聞いた。
菊地凜子インタビュー
「“これは挑戦になる”と思いましたね」
──昨年の春の三木監督との初対面ではどんなお話を?
「三木監督がお仕事で大阪へ行く日、オーディションというか顔合わせがあって、東京駅構内の甘味処で15分ぐらい初対面して、抹茶とお団子の和菓子をいただいて、映画とは全く関係ない話をしました」
──凛子さんはリストカッター・マニアの元SM嬢という役柄。脚本を読んで、どう感じましたか?
「三木監督の前の映画(『イン・ザ・プール』『亀は意外と速く泳ぐ』)やTVドラマ『時効警察』を見て、“これは挑戦になる”と思いましたね。三木監督独特の脈絡の無さや支離滅裂さに大笑いしました。脚本にはナンセンスな小ネタもたくさん仕込まれていたんですよ。そんなハチャメチャな物語の中、サヨコは自分が一番分かっているようなセリフを吐く。エンドーや俺をよく観察しているんですね」
──「バベル」のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督との大きな違いは何でしょう?
「アレハンドロは“持ってきたものを見せてくれ”というタイプ。チエコに、自由になりきらせてくれましたね。一方、三木監督はサヨコに対しても明確なビジョンを持っている。コメディなのでそれはデリケートで、小道具(ボウルいっぱいの塩辛を引っ繰り返すシーンがある)を出すタイミングや間を大事にしていました。三木監督のOKがあればOKなわけで、その点信頼が置けますよね。舞台の経験があるからどことなく教育者的で、演出上教わることは非常に多かったですね」
──トラブルにもめげない監督ですね、三木監督は。
「三木監督は精神的に本当にタフで、トラブルを笑いに変えてしまうような監督でした。松尾スズキさんも現場にいらして2倍心強かった。伊勢谷くんも仲良しだったので、どんな困難な状況でも和気あいあいと撮影できました」