「アフリカの闇に切り込んだ作品」ブラッド・ダイヤモンド R41さんの映画レビュー(感想・評価)
アフリカの闇に切り込んだ作品
別名紛争ダイヤモンド
1990年代のシエラレオネ内戦を背景に、紛争ダイヤモンド(ブラッド・ダイヤモンド)を巡る出来事を描いている。
シエラレオネ内戦は、ダイヤモンド鉱山の支配権を巡る反政府勢力「革命統一戦線(RUF)」と政府軍との間で実際にあった紛争
紛争ダイヤモンドは、反政府勢力が武器調達の資金源として不法に取引されるダイヤモンドのこと。
そしてそこに介在した架空の会社ヴァン・デ・カップ社
これは完全に「デビアス」をモデルにしているのだろう。
デビアスは実際にダイヤモンド業界で大きな影響力を持つ企業であり、紛争ダイヤモンドの問題に関しても関与していたことが知られている。
デビアスがダイヤモンド業界のすべてを牛耳っているが、そのため取引価格の調整さえしており、市場に出回っているダイヤモンドの価値は実際はその10分の1程度だとされている。
さて、
主人公アーチャーの当初の目的は、シエラレオネを脱出するために大金を稼ぐこと。
彼は元傭兵であり、ダイヤモンドの密輸業者として活動していた。
彼は、ソロモンが隠し持っている巨大なピンクダイヤモンドの存在を牢屋の中で知り、それを手に入れることで、目的を達成しようとしていた。
物語はアーチャーの当初の目的が、ジャーナリストのマディとの出会いとソロモン一家のことによって大きく変化するのが見どころだろう。
さて、、
この作品で一番心に刺さるのが少年兵の存在だろう。
これはシエラレオネだけではなく、アフリカの多数の地域で似たようなことが起きている。
以前国連で、彼ら少年兵たちが、自分たちがしてきたことを発表しながら涙を流していたのを思い出す。
捉えられ、洗脳され、現地へ送り込まれ、指示通りに機関銃をぶっ放す。
アーチャーにも同じことが起き、そのために彼はシエラレオネを脱出したかったのだろう。
少年ディアは、父に銃を突きつける。それはまるで魂まで入れ替えられたかのようだ。
もしかしたらあの瞬間にアーチャーは、ここで起きている本当の問題に気づいたのではないだろうか?
アーチャーがマディに告白した過去
その話は実際に無数に起きた出来事で、日本でも報道放映されていた。
宗教と部族の対立 スンニ派とシーア派
敵対する相手を襲い、女性をレイプし首を斬る。成人男性はそのまま首を斬る。
小さな男の子の証言「ママをレイプしないでと言ったら、しなかったけどそのまま首を斬られた」
この凄まじい現状
これをアーチャーの過去に設定している。
言い出すときりがなくなるが、アフリカ諸国で使用されている通貨CFAフラン
これはユーロと同等の価値で取引されている。
これがアフリカ諸国が自立できない要因
CFAフランはフランスによって保証されているため、アフリカ諸国の経済政策が制約される。
これにより、経済的な独立が妨げられ、貧困の原因 その他理由は多数ある。
物語はそこまで踏み込んでいないが、アーチャーがソロモン一家のディアを見たことで恐ろしい現状に気づき、自分の命と引き換えにこの一家を救う決断をした。
戦闘で撃たれたことが、アーチャーに正義を貫けと促したのだろう。
大事に持っていたピンクダイヤモンドをソロモンに渡した。
この正義の種は美しい。
ソロモンはアーチャーの意志や人間の愛について大きく心を動かされたのだろう。
それは家族と、また別の人々へと受け継がれていく。
始まりの種
こういうのが映画の持つ力なのかもしれない。
御レビュー、重たく読ませていただきました。ありがとうございます。
アフリカの奴隷制度がいまだに当地を苦しめている実情については
拙レビュー「アメイジング・グレイス アレサ・フランクリン」に書きました。