「社会性と娯楽性を両立させた稀有なハリウッド映画」ブラッド・ダイヤモンド ダース平太さんの映画レビュー(感想・評価)
社会性と娯楽性を両立させた稀有なハリウッド映画
密輸ダイヤモンドにまつわる業界の腐敗と、そのダイヤの利権を守るため、誘拐、洗脳され兵士となった少年兵の問題を正面から描ききったエドワード・ズウィックは、実にいい仕事をした。ともすれば説教くさくなりがちな題材を、最小限の抑制された演出に押さえ、観る者に判断を委ねているので、素直に胸に迫る1本になっているのだ。
が、ここまでならよくあること。本作が素晴らしいのは、サスペンスフルなストーリーとアクションの完成度も非常に高く、社会性と娯楽性を両立させている点だ。そのおかげで観客は飽きることなくスクリーンに集中できるはずだし、2時間23分という上映時間も気にならないだろう。
なお、劇中、ジェニファー・コネリー演じるジャーナリストの取材を受けた主人公が、「この映像を世界で流せば、何かが変わりますか?」(セリフはうろ覚え)と、問い、それに対してジャーナリストが「多分、何も変わらないわ」と答えるシーンがあるが、それはきっと真実なのだろう。でも、この作品を観て何かを感じて、何がしかの行動を起こす人もきっといると思う。映画が世界を変える可能性だって、ないわけじゃないのだ。
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