劇場公開日 2007年3月10日

「私はこの作品、好きです」ラストキング・オブ・スコットランド こもねこさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0私はこの作品、好きです

2013年3月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

最初はヒーローに見えたアミンが、次第に残忍性をおび、ついには誰も信用できない孤独な独裁者になっていく姿に、観客さえも恐怖を感じる、リアリティあふれる作品。

事実は、側近のスコットランド人医師などいなかったようだけど、本当にいたように思わせるくらい、アミンの残忍性に飲み込まれていく側近が、見る者に、みじめで痛々しく感じさせたのも、監督の演出の力が大きい。事実とフィクションをうまくおりまぜた構成も見事!なものでした。

それは、原作に順ずる形で製作されたからなのですが、もしアミン大統領だけを描こうと思うのなら、特にフィクションの存在に重きをおく必要はなかったはずです。それでも、原作と同じように、作品全体のストーリーテラーのような形でもあり、アミンの存在を浮き彫りにさせる意味で、あえてフィクションであるスコットランド人医師を登場させたのは、実は、アミン大統領のウガンダにおけるイギリスという国家の重要性を見せようとしたからではないかと思います。

ヨーロッパ列強がアフリカに進出してから、アフリカ各国はヨーロッパへの資源のための草刈場のような扱いをうけてきました。それが戦後になってもなおつづき、自国のためなら手段を選ばない、介入を繰り返していたのです(それはアメリカがベトナムやイラクへ介入していったのとまったく同じ理由でしょう)。そんなイギリスの理不尽さを、あえてフィクションの存在をおいて、そちらを浮き彫りにしよう、としたのように思います。また、そのスコットランド人医師の、ちょっと軽い言動や行動というのも、イギリスの国家そのものがアフリカの国のことなど、たいして重要と考えてないことの象徴のようにも見えました。

そう考えると、この作品、とても示唆にあふれている、見方によって面白い解釈ができるのではないかと思うのです。その意味では、政治家の人に、ぜひ見てほしいですね。

また、アミンのカリスマ性と残忍性をうまく演じたフォレスト・ウィテカーの演技も見事!アカデミー賞も当然といったものでした。こんな見どころの多い作品、見逃すべきではないでしょう。

こもねこ