「あんまり考えないで見た方がいい」幸せのちから マダオンさんの映画レビュー(感想・評価)
あんまり考えないで見た方がいい
どん底に追い詰められた原因が、不運ではなくある種の賭けに負けた自分にある時点で、主人公に対して可哀想と寄り添える気持ちはあんまり湧かないかも。情けない親に巻き込まれた可哀想な息子って感じ。
最後の採用されたところが映画のピークだけど、そこに登っていくのがちょっと急すぎるかな。トイレで寝たシーンを不幸のどん底として、そこから主人公がどう変わってピークに登っていくのか、その転換点となるポイントと変化がわかりづらかった。
最後欲しいもの手に入れられた要因も努力:才能:運が3:3:4くらいにみえてしまって、事実に基づくとはいえどれかに比重を置いた描き方の方が自分には好みかも。おそらく努力に振りたかったんだと思うんだけど、努力の描き方もなんとなく薄いというか...教会に並んだり息子を連れて走ることは、会社に選ばれるための努力じゃないよねって、そこを除いてしまうと人一倍の頑張りのおかげで選ばれたとは思いづらい。結果、採用された主人公に対して頑張った!、とか、成功を自分の手で掴み取った!っていう感じよりは、おー良かったねってぼんやりした感想になるというか...
加えて息子への愛もなんかどっちつかずかなと...自身の境遇があったとしても、父親がいても母親がいないんじゃ結局変わらなくない?と思ったり、不幸のどん底でも子供を手放そうとせずそれに付き合わせたことに傲慢ささえ感じてしまう。主人公が必死なのはわかるんだけど、それは本当に息子のため?息子置いてけぼりになってない?って感じちゃう。キャプテン・アメリカを落とすシーンを割と終盤のあのタイミングで入れられると、「そこに愛はあるんか?」ってなっちゃう。
でもまあタイトルとか映画の雰囲気を通して、なんとなく暖かい気持ちにさせたかったんだろうなってことは伝わってくる。家族愛とかサクセスストーリー、ヒューマンドラマとかごっちゃになってるけどベクトルがそっちの方向だということはわかるし、そっちの方向に対してある程度の満足感はある。痒いところに手が届く、求めるものど真ん中どストライクは取れないけど、ぼんやりそっちの方向にはちゃんと連れていってくれる。食べたい料理は決まってないけど、なんとなくいくファミレスみたいな?
ピンポイントで見たい映画が決まらない気分の時に、あんまり深く考えずにみた方が楽しめると思う。