暗いところで待ち合わせのレビュー・感想・評価
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拾い物だった
タイトルから暗くなるまで待ってのリメイクだろうかと
思っていたが、乙一の原作の映像化だったんですね。
だからというのでもないだろうけども
小説であれば気にせず読み進めただろう場面。
映像で見ると、いくら全盲としてもその距離ならば
気配も匂いもわかるだろう、とツッコミ入れたくなる箇所も何点か。
前半は進みも正直かったるいのだけれども
互いの存在を勘づくあたりから
ぐんと話は面白くなり、
希望のある終結を迎えるまでに収束して
盛り上がっていく。
日常に溶け込めない青年役として
台湾の俳優さんを起用したのも効果的だし、
田中麗奈の盲目の演技も予想以上に良い。
面白くて拾い物だった。
乙一の世界
「映画で観るべきは主人公の成長と周りの後押しである。」
この夏、別のレビューで書いた事をまた書くことになった。
3度目である。
独特の世界観を持ったサスペンスだが、この作品もまた主人公ミチルの成長を軸にした物語である。
劇場公開以来、15年ぶりに観賞した。ほとんどのシーンは忘れていた。ストーリーも随分あやふやで初見として観れた感じだ。元々、原作を読んでから観たのではなかったか。なので、今回と近い感じだったかも知れない。
まず有り得ないストーリーなので独特の雰囲気もちょうど良かった。ネタばらしのシーン以外は演技に重きは無く、その分演技力の全てはクライマックスに凝縮したのでは?と思う程迫真の演技であった。コントラストがはっきりしていたのが良かった。窓を含む室内のシーン、殺風景で窓の外に景色は無い。音も極端に少ない。でも美しいシーンでした。
ストーリーは杜撰なサスペンスだが上手くまとまった感じで好きな映画だ。
音を立てちゃダメだ!シーンと静まり返った場内でお腹の鳴る音が響き渡る・・・
まるで背後霊のように盲目のミチル(田中麗奈)の家に忍び込み、そのまま居座ってしまった男大石アキヒロ(チェン・ボーリン)。まるでギドク監督の『うつせみ』状態だ(最近では『アンダー・ユア・ヘッド』)。アキヒロが駅のホームから彼女が窓辺で佇む姿をジッと見ていたことから、もしやストーカー行為に走るのではないかと想像してたのに、展開は全く違ったものになりました。音を立てずに部屋の片隅を自分のテリトリーとして、彼女の生活を眺めているアキヒロ。風呂だって覗かない、寝室だって覗かない、かなりストイックな青年だったのです。
駅のホームの転落事故。死んでしまったのは松永(佐藤浩市)だ。ハーフであるアキヒロと同じ職場で、彼によっていじめられた経緯もあることから、アキヒロが重要参考人と報道される。もしや殺人犯?と緊張感が生まれる中で、ミチルは何も知らないで生活を続ける。音を立てられない、匂いも出せない、トイレだってペットボトルという窮屈な逃亡生活。いつまで居座るつもりなんだと疑問を持ちつつも、何も悪いことをしそうにない彼にも感情移入してしまう。よく観察すると、佐藤浩市の亡霊がアキヒロに取り憑いたんじゃないかと思うほど、唇、鼻、眉毛が似てきているのです。ひょっとすると佐藤浩市の隠し子なんじゃないかと疑ってしまいました。
ミチルの親友のカズエ(宮地真緒)もいい存在だ。一人暮らしを決めたのなら、一人で外を歩く練習しなければならないと突き放すところもあり、真に彼女の生活のことを考えてくれる。そしてそれ以上に優しさを感じさせるのが日本語もたどたどしいアキヒロの存在。見つかって食事をご馳走になったんだから「礼くらい言えよ」とは感じるのですが、何しろ自分の居場所がないと信じている男ですから、黙って去ることも考えていたのでしょう。
外国人や障害者に対する世間の冷たさや、親戚の態度をもチクリと描きつつも、人間の温かさを感じる映画でしたけど、これはサスペンスなんだということを忘れてしまいそうになります。そのおかげで井川遥の超人的ダッシュや狂気に満ちた表情にインパクトがありました。
【2007年2月映画館にて】
闇から出ようとしない少女と、闇に逃げ込んだ男。
闇から出ようとしない少女と闇に逃げ込んだ男
乙一原作のこの作品は題名からもオードリ・ヘップバーン主演の『暗くなるまで待って』にインスパイヤーされているのはおそらく間違い無いのでは?本人のみぞ知る所ではありますが。
静かな中に沢山のサスペンス溢れる場面があり、次第にお互いを必要と感じてくる辺りは見応えがありました。田中麗奈はこれまで苦手な女優さんだったがこの作品の演技は素晴らしかった。
天願監督は、偉大な父親が油コテコテでパワー漲る演出力だったのに対して意外にも抑制の効いた静謐な演出でとても良かったですね、あの場面までは…。
幾ら何でも佐藤浩市のあの人物像は無いんじゃないの?何て突っ込みを入れながら観ていると伏線に気づか無い畏れがあるので注意が必要ですね。だって、その後の笑劇…衝撃が強すぎますから。
ありゃ!凄すぎですよΣ( ̄□ ̄)!
今度から彼女を見たら《井○‘グエ○ル’遥》と呼ぼうかな…原作は未読だったけど何となく「別人だよなぁ〜」とは思ってはいたが、その程度だっただけに物凄い笑劇…いや〜!“衝撃的な破壊力”でした(笑)
(2006年12月5日シネ・スイッチ銀座1)
この距離感がいい
原作は読んだことがないので、そういう人が観た感想ということで。
田中麗奈の儚げな演技には愛おしさを感じてしまいます。
それゆえに心を衝くし、なによりも他のキャラクタたちが彼女を中心に動く動機付けに、もっともらしさを与えたと思います。
一方のチェン・ボーリン演じる中国人とのハーフアキヒロも、彼の存在によって社会から途絶された人間性の心の闇が際立ったような気がします。
もちろん、佐藤浩市が演じるクソイヤらしい上司っぷりも、お見事でした。
全体的に淡々としていましたが、ミチルとアキヒロの共同生活の、もどかしいようなホッとするような微妙な距離感が清々しくて良かったです。
過酷な社会でいかに生きるか。生きることは大変だけど、イヤなことばかりでもない。大事な人との“距離感”が、丁寧に描かれていると思いました。
原作には及ばないけど、観て損はない
ミチル役の田中麗奈の演技の秀逸さが際立っている。
但し、原作の良さ(私のお気に入りBest10に入る)を知っていると、映画化が難しいものだということを感じさせる。
原作では、主人公の二人が共に過ごす間のエピソードの積み重ねでラブストーリーとミステリーの展開をうまく織り交ぜているのだが、この映画では、両者ともに尺に収めようとして原作のレベルには達していない。特にラブストーリーの妙として二人が互いの不足を補うように心をひとつにしてゆく過程を描ききれていないことや、犯行の真相に心を砕くミチルの心優しさをも描ききれていないことを、少し残念に感じてしまう。
田中麗奈を活かすには、ミステリーの側面を大胆に捨てたほうが良かったのかもしれない、などと素人考えで思ったりする。
それでも、観て損はない映画だと思う。
悪くはないけど
悪くはないけどアキヒロを中国人だから他人と馴染めないって設定に変えたのはお手軽すぎない?
それのがあまり説明いらないし、やりやすかったのだろうけど。
個人的にはミチルとアキヒロの心の暗闇をもっと感じさせて欲しかった
ミチル役の盲目の演技はさすがで見いってしまいました
やっぱりカタコトな日本語のアキヒロが気になってしまいました
他のキャストは良かったと思います
田中麗奈の圧倒的な好演
自ブログより抜粋で。
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生活音がこれほどにまで魅力的に描かれた映画はそうそうない。当初セリフのほとんど無い二人の共同生活は、かすかな物音でサスペンスとなる。
この緊張感の演出もうならせるものがあるのだが、やがて心の交流に変わっていく様が観ている自分の心まで洗われる思いがして感動的。
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