「官能映画としても短歌のテキストとしても微妙な完成度」TANNKA 短歌 全竜さんの映画レビュー(感想・評価)
官能映画としても短歌のテキストとしても微妙な完成度
私は学生時代から趣味で、下手の横好きながらも短歌を描き続けている。
公開当時やから、もう6年も前か…
短歌を扱った作風やと云う以外、内容を一切知らぬまま、短歌の腕を磨く勉強にと、在りし日の静岡有楽座に出陣。
冒頭でいきなりヒロインの黒谷友香が喘ぎ声を乱舞する濡れ場を目の当たりにし、座席からひっくり返った思い出がある。
当時、短歌のテキストどころじゃなかったけど、官能映画としても微妙な完成度やなぁと思った。
先日、久しぶりにDVDで鑑賞したが、妙に時代が古臭く感じて不思議だった。
敏腕フリーライター・黒谷友香が仕事と恋愛に悩む日々を赤裸々に短歌で綴っていくラブロマンスだが、ストーリー展開は単調。
原作が恋愛短歌のパイオニア・俵万智で、
監督が名作詞家の阿木燿子という2大女流歌人がこしらえているので、台詞一つ一つが丁寧で美しく聴き取れる反面、文学的過ぎて歯の浮くような会話のやり取りに陥り、恋愛観にどうしても冷めてしまう。
恋人役が村上弘明で、一語一句がキザで、尚更、歯が浮き、虫歯が疼いた。
一方、年下の彼氏役の黄川田将也の演技はなかなかのダイコンやから、虫歯菌さえ死滅し、頭が痛くなる始末。
彼女を抱いた後、いきなり「光合成〜〜!」と叫ぶ場面は呆れ返って、背後からぶっこ抜きバックドロップを仕掛けたくなった。
女子の同窓会でカラオケハウスに年下の彼氏を呼び出し、これ見よがしに友達に自慢する黒谷友香の小悪魔ぶりが唯一の見所。
女って血も涙もないなぁ〜
そして、男っていつまでもアホな生きもんやなぁ〜としみじみ感じる作品である。
今作で短歌に興味を持ったってぇ人はおるんかな?
つくづく疑問である。
では、最後に短歌を一首
『都合良く 踊る花弁の 蜜を詠む 光合成は 砕ける前に』
by全竜