「幼さ鈍さが残酷」ただ、君を愛してる MAPLEさんの映画レビュー(感想・評価)
幼さ鈍さが残酷
成長しない病気だから大人になるのを待っててねと言われていたのに、実際は成長してしまうと病も進行して死んでしまうから成長を止めている病気だった。
誠人は静流の発言は全て信じて受け止めていたし、誰がそれすら嘘だと疑うか。誠人は静流ともっと関係性を進めていれば良かったのか?そうとは思えない。気になる黒木メイサにも、見惚れるだけで少し奥手の誠人はそれが純朴な良さであり、これがチャラ男だったら静流も好きにはならなかっただろう。
そして黒木メイサも、あざとくなく、正直で素直な子。悪役要素は何もない。ただ、付き合っているかすら怪しいのにウェディングショーに誘うのはちょっと重いかな。
大切な人が目の前にいるのは当たり前ではないと言う事はビシビシ伝わってくるけれど、既に同棲までしてたくさん会話していたんだしお互いに思いやっていたんだし、何をしておけば良かったのか。
最初に片想いしていた黒木メイサとの関係をとっとと終わらせて、静流に告白して大人の関係に進んでおけば良かったという事?黒木メイサも静流も誠人の気持ちを待っている受け身な感じで、だからといって出し抜こうとか取り合おうとかは特にないし、誠人は自らの心の中で誰が一番大切か、まだ気持ちの整理が済んでいなかったのだから、無理に黒木メイサや静流との相関図を整理しておく必要はなかったと思える。
何をどうすれば静流を失わずに済んだのか、わからないところに純愛を感じさせる作品。
とはいえ、誠人のキスの捉え方はとても軽い。黒木メイサともしてるけど、減るもんじゃないし静流とも別にいいよみたいなノリ。キスする直前に静流がメガネをはずした顔を見て初めて、想いを自覚し女性として見始めたという感じ。もしもお腹に薬を塗る皮膚病を抱えていなかったら、チャラ男になっていたんじゃないかな。
静流は、命と引き換えにしても構わないほど誠人を好きで、いつか成長した姿を見て貰う事にした=いずれ死ぬから、誠人に愛された瞬間を写真に収めて遺しておきたかったのだけれど、誠人側はそんな事はつゆ知らないから、精神年齢がまだ幼く素朴で鈍いまま静流に接しているところがキモでありとても残酷でありとても純粋。
消息不明の静流を同じ家で3年待ち、静流が亡くなってから彼女の意図を知り、静流の嘘にもう少し浸る事にした誠人は、次の恋はできないんじゃないかな。誠人にとっても、人生で一番の人になったのだろう。
黒木メイサの仲良しメンバーはのだめの脇役も出演しているがそれぞれキャラは別人。