Dear Pyongyang ディア・ピョンヤンのレビュー・感想・評価
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我が身の幸せを噛みしめる
在日朝鮮人である梁英姫(ヤン・ヨンヒ)監督によるドキュメンタリーの秀作。
私小説と言える。
2005年『Dear Pyongyang ディア・ピョンヤン』
2011年『愛しきソナ』
2022年『スープとイデオロギー』
私は何も予備知識なく、『スープとイデオロギー』を最初に見た。
そして今回、本作を見る機会があったのだが、『スープとイデオロギー』のおかげですんなりと入っていけた。
大阪に住み、
朝鮮総連の幹部である父、それを全力で支える母、
三人の兄たちは日本で生まれたがいわゆる「帰還事業」で平壌に移り住んだ。
末っ子のヤン・ヨンヒ監督だけが両親と暮らしている。
どんな報道より具体的に北朝鮮が分かる。
かの有名な?万景峰(まんぎょんぼん)号の中が見られるなんて!
当たり前だが、北朝鮮国民やそのシンパも同じ人間だということがよく分かる。
ヤン・ヨンヒ監督は、両親が全力で北朝鮮を支持する理由を理解できないままであり(『スープとイデオロギー』でタネ明かしされることになるが)、北朝鮮という国に納得いかないものを抱えている。
『スープとイデオロギー』では、すでに父は故人となっており、遺影だけを見たのだが、
本作では元気な姿を見せている。母もまだ若い。
朝鮮総連の幹部、
その言葉だけで構えてしまうが、父は明るく優しい雰囲気が画面からうかがえる。
もちろん、カメラの前だけが全てではないことは理解しているが、「それにしても」である。
日本という国に、
日本人として生まれ育った自分は十分すぎるほどハッピーであることを思い知らされもした。
父と子
北朝鮮について北朝鮮籍の在日2世が語るという貴重な当事者のドキュメンタリー。見られる光景は思想の違いはありつつも愛情あふれる親子の日常。思想や政治は何のためにあるのかと考えさせられます。
メインとなる監督の父と母の生き様は良かったのかどうかは分かりませんが、もし自分がその状況に置かれたらと考えると、一本筋の通った人生として共感できます。
家族愛の物語
表題から北朝鮮が主題の映画かと思いきや、家族愛が主なテーマでした。ヤン監督の父と母の仲睦まじい様子が良く分かり、ヤン監督と父の会話の掛け合いもとてもユニークで面白いです。娘の結婚相手を心配しているのですが、アメリカ人と日本人は駄目だと言います。父は金日成主席に忠誠を誓っていることを何回も口走ります。息子3人とその子である孫が平壌に居るため、母は早く日本と国交正常化をして、自由に行き来できることを望んでいます。国の制度のあり方も大切ですが、一番大切なのは家族愛だということを教えてくれた素晴らしい映画でした。
この映画は北朝鮮でも撮影しているため、北朝鮮の人々の暮らしぶりや新潟と北朝鮮を結ぶ万景峰号の船内の様子も分かります。残念なのは、この映画が公開されたことでヤン監督が北朝鮮に入国出来なくなっていることです。一刻も早く北朝鮮にも行けるようになることを願っています。また、北朝鮮の方が自由に自分らしく生きていける環境となることを願っています。
なお、アボジ(父)、オモニ(母)という単語は知っておいた方がよいと思います。
この映画を製作したヤンヨンヒ監督と関係者のみなさまに深く感謝いたします。ありがとうございました。
『スープとイデオロギー』を観て、これも見ていたことを思い出した。
冒頭では朝鮮と日本の歴史を延々と説明するテロップ。驚いたのは在日の99%以上は南出身であるということ。59年から20数年間にわたって行われた北朝鮮への帰国事業は「地上の楽園」と巧に宣伝されたおかげで、貧苦にあえぐ9万人の在日朝鮮人が相次いで渡っていったのだ。両親は済州島出身にもかかわらず、この映画の監督・語り手の3人の兄もこうやって北朝鮮に渡った。
朝鮮総聯(在日本朝鮮人総聯合会)の幹部まで務めた父親ヤンはあくまでも北朝鮮マンセー。最近の北の様子を見ていれば考えも変わるだろうに、身内が北朝鮮人になってしまったことや、頑固者である性格であることから意固地になっているようにも思える。しかも本来の祖国ではないのに!である。
初めて北朝鮮へ行ったときの様子や、20年後にピョンヤンを再度訪れて父の古希を祝うことになった2001年。ようやく朝鮮籍から韓国籍へと変えることを認めてくれた。頑固な一面と娘に対する優しさ。家族の姿としては微笑ましいものがあった。
『パッチギ2』を観たばかりなので、在日の家族が日本語、朝鮮語のチャンポンで会話するリアリティを見せられ、彼らの置かれた立場や主義・主張が痛いほどよくわかる。共産主義の理想とはかけ離れてしまった現在の北。様々な差別や対立もかなり収まりつつある大阪生野区だが、温かい家族がしっかりと根付いているのだ。
万景峰号の中まで観られる
在日本朝鮮人の話。
その中でも、日本に住みながら金日成に忠誠を誓い続けた、
朝鮮総連の元幹部の話。
そしてこの映画を撮ったのは、
その元幹部の教育にもかかわらず
主体思想に染まらなかったというその娘。
そういう特殊な状況下にいる人たちが、
物事をどう考えているかが描かれていて興味深い。
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