「神秘的な作画に洗練された表現の詩」ゲド戦記 エイガーさんの映画レビュー(感想・評価)
神秘的な作画に洗練された表現の詩
主人公アレンは国王の息子であるが心に闇を抱え、国王を手にかけ魔法の剣を持って逃亡。その途中大賢人ハイタカと出会い自分自身との葛藤やこの世界の善悪を感じ、成長していく物語。龍や魔法使いの存在や貧困奴隷など西洋のファンタジーな世界観。賛否が分かれると思うが個人的にこの作品の魅力はその台詞や詩。ハイタカがまだ世に不慣れなアレンに対し説明をしていくのだが、そのセリフの単語のチョイスに感銘を受けました。その中で私のお気に入りを2点紹介します。
・この星の均衡
アレン【この町はおかしいです】
ハイタカ【いや、この町だけじゃないさ。あちこちで作物は枯れ、羊や馬が駄目になり、人間の頭も変になっている。分かるか。】
アレン【疫病か何かですか】
ハイタカ【いや、疫病は世界が均衡を保とうとする一つの運動だが、今起きているのは均衡を崩そうとする動きだ。そんなことができる生物はこの世に一種類しかいないよ。】
まさに知能が発達し、必要以上に欲望を追求してきた我々人間のことであると思いました。
最後にこのセリフ
・生きていくという事は何かを失っていくという事
ハイタカ「わしらが持っているものは、いずれ失わなければならないものばかりだ。 苦しみの種であり、宝物であり、天からの慈悲でもある。わしらの命も」
アレンが敵のクモに操られハイタカに襲いかかり剣を止めた時に言い放ったセリフです。
このセリフはとても洗練されているととても思いました。もはやこの作品の主軸だと思いました。
アレンは最終的に生きた果ての死への恐怖を乗り越え、生きていく生の使命を果たすよう前向きに成長していきます。
この世に生まれ生を全うし死ぬのか、いずれ消えてしまう命に怯えながら生きていくのか、現代社会でもどこか通じる部分があると思います。
今一度この物語の真に伝えたいことを知っていただくためにも見返してみることをおすすめします。