「英雄という虚像」父親たちの星条旗 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)
英雄という虚像
作中で財務省の役人が発言していたように、当時のアメリカの財政は、膨大な軍事費の支出によって逼迫していた。硫黄島の戦い以前に国債を発行した際は、全く売れず、紙幣を増刷することになりインフレを招いたというのは知らなかった。第二次世界大戦末期で連合国軍の勝利は目前だったが、もう少しで終戦の条件において日本に譲歩することになりそうだったのは意外だった。
だからこそ、硫黄島で星条旗を掲げる写真にたまたま写った3人の兵士を、政府は英雄に祭り上げた。国債の購入促進のための広告塔にするためだ。政府の切実な事情は理解できる。しかし、芸能人でも無いのに、政府の都合で広告として利用される兵士にとっては虚しい気持ちにしかならない。
インディアンのアイラが人種を理由に入店拒否されたことからも分かるように、大衆は彼ら自身を見ていない。政府によって作られた英雄という虚像を見ているに過ぎない。そして、戦争が終われば過去の英雄として忘れ去られてしまう。そんな虚しさを描いた作品。
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