「大戦で破壊されたベルリンを舞台とした三角関係、魅力的悪女と魅力乏しい善人女性がコミカルに描かれる」異国の出来事 Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
大戦で破壊されたベルリンを舞台とした三角関係、魅力的悪女と魅力乏しい善人女性がコミカルに描かれる
ビリー・ワイルダー監督による1948年製作のアメリカ映画。原題:A Foreign Affair。
戦後すぐ、瓦礫の山が残るベルリン(若き頃、監督が新聞記者として働いた街)が舞台。街の破壊の大きさには圧倒されるとともに、そこで、ドイツ娘のガールハントにいそしむ進駐米軍兵士の姿、兵士を値踏みするドイツ女性の姿が何とも人間臭い。
マレーネ・ディートリッヒは主人公の米軍大尉(ジョン・ランド)の愛人で、ナイトクラブで歌う歌手、妖艶な歌も音楽担当フレデリック・ホランダーのピアノ伴奏で聴かせてくれる。過去、ナチス要人の愛人であったらしいが、今は相手を大尉に変えて逞しく生きているドイツ女性。やばい状況になった時大尉の上官まで色仕掛けをするキャラクター設定で、それが実に似合っていて、悪女的魅力が満載。役がらにあまりの説得力有りで、ディートリッヒとナチス、実際の彼女の関係性を調べてみることに。実はナチの危険性をいち早く気づき米国に亡命し、戦前のドイツでは彼女の映画は上映禁止となったらしい。
一方、米軍の風紀視察団の1人女性下院議員(ジーン・アーサー)は対照的に、理想主義的で米兵のナンパにめくじら立てるお堅い存在。そんな彼女がジョン・ランドの偽求愛にメロメロになってしまう展開が可笑しい。そして、恋のライバル・ディートリッヒにファッション・センスからアイオワ出の田舎女と馬鹿にされてしまう。そんな哀れにも見えた彼女が、ジョン・ランド上官の大佐(ミラード・ミッチェル)に上手く嵌められたかたちで、大尉に猛アタックをかけて、恋愛成功となる展開が物語として実に鮮やかな印象。
ハリウッドらしくないビリー・ワイルダーの戦勝国と敗戦国に対するシニカルな視点が、とても印象に残るとともに、ワイルダー作品への興味が一層拡大した。
製作チャールズ・ブラケット、原案:デヴィッド・ショウ、脚色 チャールズ・ブラケット、ビリー・ワイルダー、リチャード・L・ブリーン、ロバート・ハラリ、撮影チャールズ・ラング・Jr.、音楽フレデリック・ホランダー、美術ウォルター・タイラー、 ハンス・ドライアー。
マレーネ・ディートリッヒ、ジョン・ランド、ミラード・ミッチェル、ジーン・アーサー(オペラハット、我が家の楽園、スミス都へ行く等)。