イメージズのレビュー・感想・評価
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先に観たイエジー・スコリモフスキ 監督『ザ・シャウト/さまよえる幻...
先に観たイエジー・スコリモフスキ 監督『ザ・シャウト/さまよえる幻響』や昨年公開の『MEN 同じ顔の男たち』の延長線上でのイメージでです。
英国の都会の外れの邸宅に暮らすキャスリン(スザンナ・ヨーク)は、夫が浮気しているという謎の電話に悩まされていた。
が、彼女には、どうやら精神疾患があったもよう。
夫は、キャスリンがかつて悠揚と暮らした田舎グリーンコーヴの別荘へ静養のために短期の移住を試みるが、キャスリンは数年前に飛行機事故で死別した元夫の霊や、かつての恋人の幻影を見るようになる・・・
といった内容で、これぞニューロティック映画!というべき内容。
ニューロティックの「ニューロ」とは「神経の」という意味で、ニューロティック映画といえば神経症的映画、いまでいえばサイコスリラーなのだけれど、それほどオチがはっきりしているわけでなく、最近のサイコスリラーを見慣れた観客には「あれれ、なんだかよくわからないねぇ」というのが通り相場。
本作も、その手の類で、72年製作なれど劇場公開はされず、80年代中期あたりにビデオリリースされました。
当時、敬愛する双葉十三郎先生も、いわゆる「怪奇劇」に分類されており、80年代あたりはまだまだ精神分析的映画(特に、女性が主役の)を理解するのは難しかったように思われます。
さて、本作、中盤あたりで底割れするのだけれど、それは、
キャスリンと現夫、そして数年前肉体関係にあった元恋人との会話で、
元恋人は「別れた女房は肉欲がすさまじく、数十人と肉体関係かあった。それを興信所を通じて調査して別れ、娘の養育権を手にした・・・」というのだが、ここで言う「別れた女房」とはキャスリンのことだが、発言者である元恋人とは婚姻関係はない。
つまり、キャスリンが、過去の放蕩淫蕩の癖を思い起こして自責の念に駆られているわけで、これがわかると後半はすこぶるわかりやすい。
キャスリンが殺しているのは、かつての放蕩淫蕩癖のあった自身であり、そこに関係していた人物(飛行機事故で死んだ元夫と、グリーンコーヴで肉体関係を得ていた元恋人)。ただし、すべて彼女の心の裡で殺しているのであって、過去の封印、というのがわかりやすいか。
過去の自分を抹殺しようと戦っているキャスリンなのだが、現実と過去のイメージが交差し、最終的には、現夫を犠牲にして、過去キャスリンが勝ってしまう・・・
そういう話を、ロバート・アルトマンは脚本で書いている。
ま、本作から50年、それまでに幾度となくこの手の映画を観てきた観客にはわかるだろうけれど、当時はわかんねぇだろうなぁ、と敬遠されたのでしょうね。
スザンナ・ヨークの力演、凄し。
これが代表作でしょう。
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